第四話
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。どうやら薬の力でも、水中を高速で泳ぐことはできないようだ。ただ普通の人に比べると、少し速く泳げている。
水中は河童にとってはホームグラウンド。ましてや『水を扱う程度の能力』を持っているにとりにはもってこいの場所だ。にとりは軽い弾幕を作りあげると、男に向けて撃ち始めた。
(ちっ!)
男は弾幕に気付いたみたいだが、思うように動けないせいで弾を避けきれず被弾していく。しかし薬の影響もあってか、通常の状態よりも少し動きが早い。被弾してもかすっているばかりだった。
戦況はこちらが有利だ。にとりはここぞとばかりに弾幕を造り続ける。
「まだまだ!!」
ある程度弾幕を打ち終えると、にとりはポケットから一枚のカードを取り出す。そこには河符『ディバイジングエッジ』と書かれていた。
(スペルカード!? まずい!!)
男は弾幕が止まっている隙になんとか水面にでようとする。さっきより泳ぎに焦りが見られた。どうやら息が限界になっているようだ。
(すべて計算通り……)
不敵な笑みを浮かべながらスペルカードを発動させる。大量の弾幕がにとりを包み込むように発生し、水中を埋め尽くすようにばらまかれていく。
弾幕は男が水面に出る前に到達し、次々に彼の体をかすめていく。痛みに少し顔をゆがめながらも、男は無理やり水面に出ようとしていた。だが、少し無理があったみたいだ。
(くそっ! やっぱり先に弾幕を避けたほうが――)
男は振り返って弾幕を避けるのに専念しようとする。だが、目の前には大きな弾がこっちに迫って来ていた。
(しまっ……ぐっ!?)
骨が軋む音がなりながら、弾は男の腹部にめり込んでいく。衝撃で肺に残っていた空気が、大きな気泡を造りながら漏れていく。男はそのまま気を失ってしまったのか、そのまま水底まで沈んでいった。
「やっと止まった」
にとりは少し警戒しながら男に近づいて行く。男が動くような気配はない。完全に気絶しているようだ。
このままでは男は死んでしまう。にとりは呼吸ができるように、男を抱えて水面へ上がろうとする。
「殺しはしないよ。あんたも殺そうとはしなかったからね」
そう言いながら男の体を持ち上げる。だが男の顔を見た瞬間、にとりの手は止まっていた。
「なっ!?」
男は歯をむき出しにし、こっちを見ながら笑っていた。ホラー映画で化け物になった人間が、笑いながらこっちを見ているかのようだ。恐怖心をあおられ、思考が崩れるように停止していく。
その直後、腹部に衝撃が走ったかと思うと、潜水艦から魚雷が発射されたかのように急上昇しはじめる。そのまま水中から飛び出して、部屋の壁に打ち付けられた。
「がっ……ごふっ!」
にとりの口から大量の血が吐き出される。腹部には男の右手が、肉体を抉るかのように食い込んでいた。
水中で
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