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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
24.July・Afternoon:『Predator』U
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やはり、黒子のみを狙って。
 青白い体液を撒き散らし、狂気染みた咆哮を上げて────!

「信じますわ、ええ……お姉様が、信頼なされる方ですもの、貴方は」
「はは、結局、御坂基準か……まぁ、そういうところが良いんだけどさ」

 生気を取り戻し、いつもの不敵さが戻る。そんな黒子の右腕が、嚆矢の刃金の右腕に重ねられる。
 白く温かな、小さな右腕。冷たく醜い、怪物の鉄腕に重ねられて。

『────そう。そう、なんだね。アナタは……うん』

 同じく、純銀の右腕が沿う。嚆矢と黒子の右腕に、重なるように伸びて──────

『Grrr──────?!!』

 煌めきが、満ちる。純銀の光、目映く二人の右腕に。虚空、引き裂くように。
 そして、猟犬は気付くだろう。虚空を掴むその鈎爪は、既に己の首を捉えている事に。今更、気付いても遅いのだが。

『Ga─────?!』

 そう、遅い────己の持つ『温度』が空間移動(テレポート)させられている事に、気付いても。
 既に、その身は氷点下。しかし、まだ動ける。怪物たるティンダロスの猟犬は、この世の法則では計れない。一歩、また一歩、獲物たる黒子に躙り寄り────

「無駄だ、怪物……お前には解らねェだろうが、この世で下がる温度には、限界があるのさ」
『Gi……?!』

 そこで、割れた。前肢、砕けて消える────!

『その温度が、絶対零度(アヴソリュート・ゼロ)。ヒューペルボリアを滅ぼした、零下の風……!』

 体が、崩れていく。全ての振動が凍結し、電子の動きすら停止した細胞が凍り腐れ、崩壊していく。
 そして、それは現在だけではない。遥か往古、一つの大陸を滅ぼした風は────猟犬の、今から繋がる過去の全てを凍て付かせ砕く!

「では────ごきげんよう」

 後には、身動き一つ無くなった猟犬の氷像が残るのみ。その、異形の彫刻に向けて。

「もう二度と会う事がないよう、祈っておりますわ」

 黒子の飛ばした金属矢に、粉砕される。異形にしては、澄んだ音色を立てて。

『「猟犬が……ッ?!』」
「余所見してる場合かよ、古都────!」

 そして、古都の目の前に空間移動(テレポート)で現れた嚆矢。右腕、既に古都の右腕を掴んで。

『「くっ─────!』」
「どうした────決闘だろ? 俺と、お前の!」
「決闘……僕と、主将の……!」

 瞳が、開く。赤濁した、古都の瞳が。確かな────反骨心を持って。
 その時、近くのスピーカーから音楽が。柔らかな、優しい音色。それを聞いた、古都は……目に見えて、意思を取り戻す。嚆矢ではなく、自らの質量を増す。万有引力を味方に付けた彼の今の重量は、地球そのもの。

『どうした、ミヤコ──
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