第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
24.July・Afternoon:『Predator』U
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。虚空その物のこの右腕なら……それが例え、『事象の地平線』であっても。
だから、後は俺次第。俺が、俺の生涯……たった二十年程だが、その間に積み重ねてきた全て。全ては、この刹那の為に! あらゆる、過去は────!!!
『「な──────バカな!?!』」
その、信念。今の今までの生涯で、この状況を乗り切る事が出来るだけの自分であると自負して────迫り来る質量の地平線の、『理合』を確かに掴んで。
『Gyaiiiiiiiiin!?!』
『「事象の地平線を────投げただとォォォォォッ!??』」
地平線に呑まれ、跡形もなく押し潰された────猟犬の断末魔。更に、直径二メートルもの大穴が、数百メートル先の橋脚まで穿たれて。
必殺の一撃を『投げられた』衝撃と驚愕に絶叫した、古都と『妖蛆の秘密』。
「──────うそ……では、あれは……本当の事、でしたの?」
それは、彼の腕の中の黒子も同じ。有り得ない事だ、普通ならば。ブラックホールを投げる、等と。
しかし、彼女は思い出していた。彼女が、ここまで支えとした人物の言葉……御坂美琴の、先程の話を。
『投げたのよ、あの人。私の超電磁砲を、合気道で。まぁ、代わりに右腕がへし折れてたから、病院行きで私の勝ち扱いだったけどね』
自嘲しながらの、そんな言葉を思い出して────己を抱く男の、前を見詰め続ける顔を見詰めた。
「悪い、力……貸してくれ、黒子ちゃん」
「え──力、って……どういう事ですの?」
その蜂蜜酒色の瞳にいきなり見詰められ、思わず頬を染めた彼女。だがすぐ、風紀委員としての顔を取り戻して。
「あの犬コロは、また来る。完膚無く消し飛ばさねェ限り、何度でも」
「ですけれど……あの怪物は、わたくしの『空間移動』で飛ばす事はできませんでしたわ……」
「だったら、『他のもの』を飛ばしゃ良いンだよ。ほら、童話の北風みたく、服だけ飛ばして剥いちまうみたいにさ」
「貴方という人は……全くもう、こんな時にまで軽口だなんて、ある意味尊敬いたしますわよ」
不敵に微笑んだ、その顔に。この場にそぐわない程、剽軽な。そんな彼に、黒子は────今までのように、軽い溜め息を吐いて
『コウジ────』
────やれやれ。貴様は、また……是非もなし、か。
そんな黒子の声ではない幻聴は、二つ。一つは純銀、嬉しさを微かに漂わせて。一つは影色、呆れ果てて。
歪んだ鋭角、そこを睨む嚆矢の右側の視界の端に浮かぶ、二つの幻覚は。
『Gruoooooooo!!!』
予測通り、再び過去から走り出したティンダロスの猟犬。
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