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Shangri-La...
第一部 学園都市篇
第2章 幻想御手事件
24.July・Afternoon:『Predator』U
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宙の邪悪の結晶の如き悪意の塊。
 獲物と定めた黒子に向けて、鋭利な舌先を射ち出すように肉薄する──!

「邪魔、だァァァァァァッ!」
『Gyaiiiiiiiiin!?』

 予測していたそれに、偃月刀を振るう。舌先、そして右前足を斬り飛ばされ、絶叫した猟犬。

「オイオイ……勘弁してくれよ」
「先輩────腕、に……!」

 だが、もう。もう、傷口は不快な粘液が泡立ちながら塞ぎ、あろうことか再生を始めている。まるで、蜥蜴の尻尾のように。
 対して、嚆矢は────庇った右腕の前腕に、舌先を受けてしまっている。注射器の如き舌先、そこから流し込まれた、()()()()。生命体を蝕む、猟犬の体液を。

『……ティンダロスの猟犬は不死。死なないから、傷も意味がない。意味が無いモノはね、無いのと同じなんだよ、コウジ』

 右腕に突き立つ舌先を引き抜き、投げ捨てる。もう、遅い。僅かな量でも、人にとっては致死。何故なら、()()()()()であるこの怪物の毒に、解毒剤などはこの世に存在しないのだから。
 光の加減によるものか、右の視界の端に純銀。くすんだ、煌めきを失った鈍い光。まるで、昼間の月の如く。

────無意味、無価値。非在の者、正体不明の怪物(ザーバウォッカ)。お前の事だよ、嚆矢?

 そして、毒による幻覚か。左、揺らめき。昏い陽炎、影色の鋼。冷たく嘲笑する、燃え盛る三つの瞳。

『例え、殺せたって。時空の螺旋を走る猟犬は、過去(ワタシ)から現在(アナタ)に現れる。だから不死、だから無理なんだよ、コウジ』

 諦め、倦み微睡んで。純銀は、疲れたように微笑む。

────さぁ、またしても選択の時だ。さぁ、選べ……。

 諦めろと、嘲笑いながら。陽炎は、爛々と口角を吊り上げて。

『みんな、忘れてしまう。だけどね、過去(ワタシ)がないものは存在しないんだ。過去(ワタシ)は、いつも現在(アナタ)を見ているのにさ……だから、無理なんだよ。現在(アナタ)は、未来(わたし)は変えられても、過去(ワタシ)は変えられないんだから』

────選べ。お前の腕の中で震えるその娘か? それとも、お前の目の前で遅い来る男か?
 選べ。お前は……どちらを、殺すのか?

 二つの幻聴は、異口同音。『諦めろ』と。再生を果たした猟犬が、獲物を横取りしようとする嚆矢(闖入者)に怒りに燃える濁った瞳で睨みながら、再び鋭角に消えていく。

「っ……お姉様」
「……『お姉様』、か」

 呟きは、ここには居ない彼女の心の支え。情けない話だ、今確かに此処に居ると言うのに、自分では支える事も出来ていないのだ。
 更に、空間の歪み。古都の右掌、莫大な質量を
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