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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
錬金術師の帰還篇
33.錬金術師の帰還
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つ少女がいる。
大切な人を失うかもしれない恐怖が背筋が凍る。
こんなとき、いつも助けてくれる少年たちはいない。
「どうして友妃さんがここにいるんですか?」
天塚を追いかけながら雪菜が訊いた。
「那月ちゃんに夏音ちゃんの護衛を任されたんだ」
早口で友妃が答える。
今は最低限の情報だけでいい。あとでまた説明すればいい。
従業員通路の扉を蹴り破って船内の広い通路に出る。
そこには赤白チェックの錬金術師と長い髪をショートカット風に結い上げた少女がいた。
そして錬金術師は無造作に手を振り下ろす。
「凪沙ちゃん! 伏せて──!」
「え!?」
雪菜の絶叫めいた声につられて、凪沙がその場に屈みこんだ。
その頭上に銀色の光が散った。凪沙を目がけて飛来した触手を、雪菜がナイフで弾き返した。
「ゆ、雪菜ちゃん!?」
なにが起きたかわからぬまま、凪沙は、雪菜が握っていたナイフに驚いている。
そして雪菜と睨み合う男の姿に絶句する。男の輪郭がぐずぐずと崩れ、怪物へと変貌していく。
「な、なに、この人!?」
「雪菜! 凪沙ちゃんを連れて逃げて!」
怯える凪沙の前に友妃が出る。友妃がいるのは広い通路の中央だ。怪物から逃げるのは難しくはない。しかし凪沙は青ざめた顔で首を振り、その場に力なく座りこんだ。
「魔族……なの?」
「凪沙ちゃん……!?」
身動きもできないほど取り乱す凪沙に気づいて、友妃と雪菜が驚愕する。
凪沙は魔族恐怖症。絃神島に来る前にある程度の情報収集している中でそれを知ってしまった。
だから、彼女はその場から逃げ出すこともできないのだ。
「失礼だな。僕は人間だよ。傷つくなぁ……」
恐怖におののく凪沙をいたぶるように、天塚がゆっくりと近づいていく。
「い……いや、来ないで!」
凪沙が声を震わせながら、必死で後ずさろうとした。しかし硬直しきっている腕に力が入らずに床を滑っている。
雪菜が必死に凪沙を離脱させようとするが、無理のようだ。この場で戦う選択肢もあるがこの狭い空間では、“夢幻龍”の真の力は発揮できない。
しかし新たに現れた天塚が逃げ道を塞いだ。
同時に二体を相手し、雪菜と凪沙を護りながら戦うのは不可能だ。
“夢幻龍”の幻影を使えばなんとか回避できるかもしれない。しかしあれは相手の目にそこに無いものを有るように見せ、有るものを無いものに見せているだけで、実態は確実のそこにある。それに二体いる時点で即座にそれが幻影だということもばれてしまう。
その間にも二体の天塚はさらに距離を詰める。
「い、嫌っ! 助けて、古城君! 古城君────!」
凪沙がうずく
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