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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
錬金術師の帰還篇
33.錬金術師の帰還
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ンズ・ブラッド》”の動きすら、感知できるからだ。

「いや、“音響結界《サウンドスケープ》”の再起動にはまだ時間がかかるぜ」

「肝心なところで使えない男だな。そんなことだから、閑が手も握らせてくれないのだろうに」

 那月が落胆したように言い放つ。

「うるせえよ! ていうか、なんで知ってんだよそんなこと!」

「これだから矢瀬は」

「おまえにだけは言われたくねえよ、彩斗」

 打ちひしがれたように落ち込む矢瀬。那月は無造作に指を鳴らして、目の前の空間を歪ませる。

「いや、こいつはおまえよりもすごいぞ。なんといっても毎日、叶瀬夏音と一緒に寝て──」

「あーあー! 早く行くぞ、那月ちゃん!?」

 那月の言葉を遮って彩斗は叫んだ。
 彼女の背中を無理やり押して空間跳躍のゲートの中へと二人揃って虚空へと消え去る。
 矢瀬は途方に暮れたように地面を見下ろして頭を抱える。

「どうやって降りろってんだよ、これ……」

 傾いた灯台の上に一人取り残された矢瀬。




「──雪菜ちゃん、どこ行くの?」

 こっそり船室に戻ろうとした雪菜を凪沙が不思議そうな表情で呼び止める。
 彩海学園の宿泊研修たちは、フェリー内のホールに移動中。昼食の時間になるまで、そこで教材を観る予定だった。

「ちょっと忘れ物。先に行ってて」

 雪菜は早口にそう言い残すと、凪沙の返事も聞かずに走り出す。
 無人の船室に戻った雪菜は、旅行カバンの底から細長い布包みを取り出した。包みの中身はナイフだった。刃渡りは二十五センチほど。
 それが二本。制服の背中に突っ込んで、目立たないように上からコートを羽織る。
 雪菜はそのまま船室から、真っ直ぐに船橋のほうへ向かった。
 特に何か異変を感じたわけではない。
 だが、胸騒ぎがした。剣巫のカンが危険を訴えている。

「──え!?」

 そして階段を駆け上がっていた雪菜は、自分の前に歩く人影に気づいて驚愕する。

「叶瀬さん?」

「あ……」

 雪菜に呼び止められて夏音が怯えたように振り返る。

「もしかして、あなたも?」

 弱々しく彼女はうなずいて、碧い瞳で雪菜を見返す。

「この船をなにかよくないものが取り巻いてるみたい、だから──」

 自分がどうにかする、と言いかけた夏音を、雪菜が微笑んで制した。

「大丈夫。ここから先はわたしが行くから、笹崎先生に知らせてもらえる?」

 雪菜が背中から引き抜いたナイフを見て、夏音が驚いたように瞬きする。

「あ、待って」

 走り出そうとする雪菜の背中を呼び止める。
 立ち止まって心配そうに見上げて、夏音が静かに言葉を続ける。

「私はこの感覚を知っ
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