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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
錬金術師の帰還篇
33.錬金術師の帰還
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一髪で救ってくれたのだ。

「まあ、なんとか」

 矢瀬はのろのろと顔をあげる。

「今回はさすがに死んだと思ったぜ、助かったわ、那月ちゃん。ありがとな」

「担任教師をちゃん付けで呼ぶな」

 那月が不機嫌そうに唸って、矢瀬の背中をヒールで蹴った。

「まったく貴様といい、吸血鬼どもといい、担任をなんだと思っている……!」

「ちょ……痛い、俺、怪我人なんスけど! 血ィ出てるし! ドバドバ出てるし!」

 血まみれの両腕を頭上に掲げて、矢瀬は必死で訴える。
 そんな教え子を無視して、那月は埠頭の様子を見回す。

「あのバカはなにをしている」

 那月は目に映った光景に深い溜息を漏らすしかなかった。
 空から黄金の翼を持つ巨大な梟がこちらへと飛んでくる。そんなバカな真似をするやつなどひとりしかいない。
 巨大な梟の上に乗っている制服姿の少年はこちらを見つけて手を振って向かってくる。

「那月ちゃん! なにがあったんだ?」

 那月と矢瀬がいる灯台の屋根の上に少年が着地する。
 それと同時に那月は彼の腹めがけて鉄拳を加える。
 ぐぅお、と声にならない声を出して傾く灯台の屋根から転がり落ちていく。危うく地面に叩きつけられるというところでギリギリで持ちこたえる。

「いきなりなにすんだよ!」

 自らの眷獣に乗ってきた吸血鬼の緒河彩斗が叫ぶ。

「貴様がバカな登場をしてくるからだ」

 那月はもう一度、彩斗を殴ろうとしたが辞める。
 這い上がってきた彩斗が埠頭の様子を見回す。

「これを天塚の野郎がやったのか」

 無言で那月は頷く。
 彩斗はとても悔しそうな顔をしている。

「とりあえず、緒河。貴様は“賢者の霊血(ワイズマンズ・ブラッド)”は知っているか?」

「“賢者の霊血(ワイズマンズ・ブラッド)”……?」

 彩斗は目を細める。どうやら知らないようだ。

「知らずにここまで来たのかよ」

「知らねぇからここに来たんだよ。てか、なんで死にかけてんだ、矢瀬?」

 ぐったりとしている矢瀬を見下ろして彩斗は不思議そうに見ている。

「まぁいい。で、その“賢者(ワイズマンズ)”ってのはなんだ?」

 矢瀬がある程度彼に説明をする。

「とりあえずなんとなくは理解した」

「貴様にしては呑み込みが早いじゃないか。このぐらい授業もなってくれればいいのだがな」

 那月が悪態をつく。

「それとこれは別だ。天塚がどこに向かったんだ?」

 彩斗が矢瀬に問う。
 それは彼の能力。“音響結界(サウンドスケープ)”によって結界内の音響の動きを観ることができる。それによって不定型の金属生命体である“|賢者の霊血《ワイズマ
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