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ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
錬金術師の帰還篇
33.錬金術師の帰還
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 制服姿の凪沙の目の前。互いの息が触れ合うほどの至近距離に少女の顔があった。
 肩にかかる黒髪を真っ直ぐ切り揃えた、真面目そうな顔立ちの少女だった。眼鏡のレンズ越しの瞳は閉じている。
 彼女のその唇が、同じように目を閉じている凪沙に近づいてくる。
 そして二人の唇が重なり合う寸前で──

「も、もうダメ……限界!」

 凪沙が叫んで顔を上げた。
 ポッキリといい音を立てて、二人の口にくわえていたスティック菓子が折れた。
 それを見ていた友人たちが、おおっ、と落胆混じりの声を洩らす。
 中等部の宿泊研修一日目。東京湾に向けて移動中のフェリーの中で、凪沙たちはポッキーゲームをしていたのだ。

「はーっ……危なかった。ファーストキスを委員長に奪われちゃうところだったよ」

「お互いさまよ」

 脱力して床に転がる凪沙を見下ろして、黒髪眼鏡の少女がクールに告げる。

「それにしても雪菜は強いね。今まで負けたことないんじゃない?」

 トランプを回収していた同じくクラスメイトのシンディが言う。
 シンディといっても彼女は秋田出身の日本人。単に苗字が進藤で、自己紹介のときに緊張のあまり噛んでしまい、それ以来シンディと呼ばれ続けている。彼女と委員長、そして雪菜を加えた四名が凪沙の班のメンバーだ。
 再び始まった過酷な罰ゲーム付きのババ抜き。

「そういえば雪菜さ、凪沙んとこのお兄さんとは最近どうなの?」

 何気ない口調で訊いてきたシンディの言葉に不覚にも動揺してしまう。

「お、動揺したね」

「いただき」

 雪菜のペースが狂った隙にシンディが雪菜の安全なカードを奪っていく。

「暁先輩って、最近ちょっと雰囲気変わったよね」

 シンディがさらに古城の話題で動揺させようとする。しかし、その話題は雪菜は無視できない。彼女は中学時代の古城の後輩なのだ。つまり雪菜の知らない古城のことを知っている。

「ど、どんなふうに?」

「うーん、バスケやってたころの雰囲気に戻ってきたかも。少し前まであの人恐かったから」

「暁先輩が……恐い?」

 真面目な口調のシンディの言葉に雪菜は疑問を持つ。
 雪菜が知る限り、古城はだらだらとした怠惰な生活を送ってるイメージしかない。

「あまり想像つかないけど」

「ああ、グレてたとかってことじゃなくて、なんだろ。殺気立ってるっていうか、話しかけづらい感じ? あと、たまにすごい怪我してたし」

「それって……いつ頃の話?」

 雪菜が眉を寄せて訊いた。

「うーん。春休みとか、GWとか、それくらい。ほら、ちょうど凪沙の検査入院があったりしたから、そのせいかなって思ったんだけど」

「春休み……」

 雪菜が重い息
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