夜明けと夕暮れ、秋色に
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せめて小腹くらいは満たして欲しい。
†
夢を見ていた。
自分の半身とも言える少女と過ごしてきた日々を。
母が連れてきた彼女――――明は狂っていた。
普通に話をして、普通に生活をする。泣きはしないけど、笑うし、怒る。でも、やっぱり狂っていた。
小さな頃から袁家の汚い部分を任せられ、戦闘技術を教え込まれ、血に狂うまでヒトゴロシに身を置いて来た彼女。
汚い部分を見れば見る程に、そういうモノだと現実を認識し始め、倫理観も曖昧になった彼女は快楽の虜になっていた、らしい。
母はそんな彼女を私と引き合わせた。好きに使え、と。今思えば、袁家に残ると言って聞かなかった私の護衛を事前に命じてあったんだろう。
普通に頭がいい彼女は、私の手伝いとして事務仕事をある程度こなせた。もちろん、上層部の命に逆らえるはずも無く、暗殺等の汚い仕事も任せた。
ただ、おかえり、と言うと……いつも彼女は一寸面喰った後にはにかんで、ただいま、と返してくれた。
親に殺されかけた彼女は、平穏な日常にいつまでも慣れなかった。
親を殺した彼女は、平穏がどんなモノかを見失ってしまっていた。
そんな日々が続いていく内に、彼女は私に依存していった。母では無く、私に。
きっと私の願いを聞いたから、だと思う。
袁家を壊して母を救いたい。
命令を聞くだけの彼女に零したのは……誰か共犯者が欲しかったからだ。
昔の私はバカだった。もし、彼女が上層部の監視役だったら大変な事になっていただろう。
しかしその選択が、私に大切な人を作るきっかけになったのだ。きっと彼女は、私に自分の望む姿を重ねたのだろう。私が母を救えたら、自分も救われる、と無意識で感じていたのかもしれない。
桂花とも知り合った。始めは利用するつもりだったけど……いつの間にか二人の妹みたいな感覚で秘密の付き合いをするようになっていた。
狂っていた彼女は、その時も狂った部分は治ってなかったけど、何処か人間らしさも取り戻し始めていたように見えた。
明を助けたい、と思っていたのは、多分初めに出会った頃からあったのかもしれない。
充足感に満たされ、私の計画通りに進んでいき、何もなかった私にとって一番楽しい時間だった。
あの時お母さんが倒れるまでは……全て上手く行くと思っていたのに……
†
大切な友との思い出を夢に見た少女は、起きてすぐに涙を流している事に気付いた。
起き抜けでまだ昨夜の気だるささえ抜けておらず、夕はコシコシと瞼を擦りつつ寝返りを打つ。
窓から差す光は直線でなくとも眩しい。目を開けるのはまだ。瞼越しに光を受けて、手を握ったり開いたりと、全身に早く血を巡ら
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