夜明けと夕暮れ、秋色に
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鳳統が許せないくらい、そんなに好きになっちゃったんだ?」
「……うん。秋兄が欲しい」
眉根を寄せてコクリと頷く夕。
明に嫉妬心は無く、ただ純粋な愛おしさが溢れて耐えられず、明は彼女に口づけた。
「ん……」
数瞬の間重なり合った二人は、顔を離して目を合わせる。
「じゃあさ、次は負けずに奪い取っちゃおう」
「……ん」
「まあ、敵は元から曹操だし、全部ひっくるめて頂いちゃおう」
「……ふふ、当然。だから明、その為に、私と一緒に戦って」
「いいよ。あたしは夕の為だけに戦うもん。だからさ――――」
「ん、手に入れよう。私の為に、あなたの為に」
目を細めてにやりと笑う夕の瞳に、昏い影が揺れる。
妖艶に笑い返した明は、両頬と額の三点に口づけを落とした。
するすると、細い手が明の背中に回される。明の手は夕の背筋をつつっとなぞる。
「……ぁぅ」
仄かに熱い吐息と声が漏れ、モノ欲しそうに見つめる夕に、また口付けを落とす。
二人は、自分達に足りないモノを確かめ合うかのように求め合い、夜を深めて行く。
†
夢を見ていた。
遥か昔の出来事から今に至るまでを断片的に思い出す……自分の存在を確かめるような夢。
文官である親と一緒に街で暮らしていた。
親とは違った才能があるかを確かめる為に、と一つの道場に入門したのが転機だった。そのまま城に連れて行かれて、軍に入った。
何故、と聞いたら、武の才があるから武官になるべきという親。それからは上司に言われるがままに鍛錬に励んだ。
大人にも相手が居なさすぎて目を付けられたのはいつだったか。ああ、そうだ。七つになる時だ。
今までとは違う技術と、違う戦闘方法を教えられた。あの時のあたしはバカだったから、疑問も持たずにそれを身に着けて行った。
そうこうしている内に、一人の人を内密に殺せ、と命じられた。一緒に呼び出された親の目の前で。
命を奪うという行いに、倫理的なモノか、それとも理性的なモノか分からないけど怯えた……が、拒否できるはず無かった。親の後ろでは刃を煌かせるモノが居たのだから。
殺した。呆気なかった。こんなに簡単に人は死ぬのかと、驚愕さえした。
血の匂いと湯気の上がるハラワタ。虚ろな目をして動かなくなったそれは、ただの肉袋なのだと感じた。
日に日に増えるヒトゴロシの要請。武官のはずなのに、どうしてあたしは戦場で戦わないんだろうと疑問に思っていた。
でも、殺した。ずっと、ずっと、ずっと……殺し続けた。赤い髪が仕事の度に真紅に染まっても、血の匂いが大好きになっても、恐怖に引き攣る顔を見るのが快感になっても。
いつからだろう。楽しかった。ホントに楽しかったんだ。あたしはその行
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