夜明けと夕暮れ、秋色に
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、という違いはあったが。
ただ、二人にとって最も恐ろしかったのは、その後であった。
「明が郭図と猪々子の状況把握と張遼への対応に向かった隙を見て、残りの兵のほとんどが部隊長と城壁外に練兵にいった間に……祭りの警備兵に化けていた徐晃隊の数百人が街では無く私が居た城を占拠した。笛の音が鳴った。文官は一斉に城で自室に引き籠ったから、計画されてたんだと思う。街の人々も笛の音に反応して警戒を強めるように日常から刷り込まれてるから、区画警備隊との連携上、被害はまず出ない。対応する間も無くて、逃げ出すしかなかった。街にどれだけ潜んでいるかも分からなかったから、護衛の兵だけで逃げるしか、無かった」
「逃がしてくれたのは秋兄が内緒で命じてたから、だろうね。鳳統と煮詰めてたなら多分……」
「うん。私を捕まえるか殺せたはず。なのに逃がしたのは、私に宣言する為。袁家を変える気があるなら直ぐにでも変えろ、出来ないなら敵として叩き潰す……多分、それだけ」
鳳凰と黒麒麟によって二重に織り込まれた策。それが彼女達を徐州での敗北に追い詰めた。
逃げた後も道中で追撃の伏兵として徐晃隊が現れ、神速との挟撃によって兵糧を置いて逃げ出すほど。
夕は震えた。自分が後手に回った事で、全てが崩壊してしまったその時を思い出して。
何より秋斗が、外部にいるのに自分を手駒のように扱っている事に……喜びを覚えて。
「……ズルい。秋兄はズルい。敵なのに、殺そうとしたのに、従えようとしたのに、揺さぶったのに、策に嵌めようとしたのに、どうしてあの人は私を信じてるの? 効率を優先するくせに、これだと非効率でしかない。私を殺せば袁家の指揮系統は揺れるはず。人の命も多く救えたはず。戦も楽になったはず。なのに……どうして私を殺さなかったの?」
疑問ばかりが宙に溶ける。責めているような声音には甘い色が浮かんでいた。軍師ならば有り得ない選択をする彼の思考が、只々、夕の興味を惹きたて、心を一色に染めて行く。
「さあね。わかんないよ。あの人の考えることなんかさ。矛盾だらけだもん」
「ズルい……ズルいズルいズルいズルいズルいズルいっ。鳳統ばかりズルいっ。私が隣に居たら、あの人は劉備を食い散らかせた。曹操と大陸を二分するほどの王に押し上げれたのに」
わがままを言う子供のよう。そんな嫉妬の漏らし方と、変わらずに自分が上だと示したから、幼さを垣間見て明は苦笑が漏れ出た。
「ふふっ、嫉妬は醜いよー?」
「だって……あの人が化け物に身を落としてまで守ろうとしたんだよ? ズルい。ズルい、もん……」
消え入る声の後、グイと身体を己に向けさせた明は、じっと彼女の顔を見つめた。
口を尖らせて、目尻には悔しさの涙。ここまで感情を表に出した夕の事を、明は初めてみた。
「
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