夜明けと夕暮れ、秋色に
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ぞっとした。
徐州で勝っていたら、この策がそのまま曹操軍に降りかかっていたのだ。相手の兵数をより少なくして確実に勝ちを取りに行く、それが夕のやり口。敵を減らす事が出来るのは、何も戦場だけでは無い。
恐ろしいと震えるも、気にしていない振りをして、明は夕の上着を脱がせた。バンザイをした夕はされるがまま、小さい身体ながらも自己主張のある胸が揺れる。下着だけになって寝台にコロリと寝ころんだ。
「……秋兄が手に入らなかったのだけが不満」
むすっと口を尖らせて零した彼女に背を向けられた。たゆん、と揺れた胸が僅かに明の心の欲を掻きたてる。ふるふると首を振って追い遣った明は灯りを消して、服を着たまま寝台に上がりその背を抱きしめた。
「んー……無理だったモノは無理で仕方ないよ。郭図の言ってた事は多分、嘘じゃないし」
「……秋兄が……ホントに一人で八千の兵を殺したの?」
「逃げた兵とか、その時其処にいた生き残りとかに話聞いたけど、化け物がいたってさ」
「おかしい。だって明と同じくらいのはず。呂布相手に死にかけるあの人が、そんな武力を持ってるわけがない」
「居たのは居たで仕方ない。ただね、秋兄が……一つでも多くの命を先の世に残したいあの人が、その力を常に使わないわけがない。だからきっとね……ナニカを捧げて燃やして、大切なモノを守ろうとしたんだよ」
明の言葉に、夕の肩は小刻みに震えだした。ため息を一つ。優しく、彼女の髪を撫でた。
「全部、負けちゃったねー……」
「……っ」
一寸跳ねる彼女の身体を抑え付け、明は耳元で冷たい声を流していく。
「復習しなきゃ。負けた事。ちゃーんと反省しないと。こうやって落ち着いてる時にこそ。次の戦の為にも、さ」
敗北の原因を探れば、研鑽を積み上げて次の勝機の礎となる。
まだ、彼女達は完全には負けてはいない。苦しくなったとは言っても、捕らわれても、殺されてもいないのだ。
「……祭りは、完全に抑えた、と驕ってた。あれは鳳統の策。民への不干渉と内部残留文官に管理を一任させて、私は軍の事を動かした。でも……その隙に劉備は逃げた。同盟での軍議の間も与えない日数の短縮を行い、私達が情報収集と戦の準備で忙しくしている間に“曹操軍の神速に攻めさせる”……そこまでが、多分鳳統の策」
同盟では足並みを揃える為に日数を掛けなければならない。それが当然、と考えていた夕の失態。減った糧食計算、兵数の確認、どのようにして敵を攻略するか……そのように全てを煮詰めて決断するはずの軍議の時間を秋斗と雛里は短縮したのだ。覇王という、希代の天才の能力を信頼して。
しかしながら雛里は、秋斗が対価として差し出され、直ぐに神速と共に徐晃隊の連携を指揮できるとして。秋斗は自分だけが曹操軍に移籍して
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