第十二話 終局
[6/10]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
」
バチィーン!
しかし、上戸に一瞬の隙が出来たのを瀧は見逃さなかった。双方戦闘能力は全く同じ、勝負はふとした事で決まる。
上戸のサーベルが瀧の一太刀に弾き飛ばされ、大きく宙を舞った。
上戸は咄嗟に飛び退いて瀧と距離をとる。
瀧は日本刀を構え、丸腰になった上戸を睨んだ。
「……らしくないな。余所見とは。」
「そうね。……どうやら、地平線の向こうから大きな大きな“雷”がやってくるみたいだから、気を取られちゃったわね」
上戸がそう言った瞬間、空気が大きく震えた。空の向こうが、夜のはずなのにやたらと明るい。その光に包まれて、周囲はどんどん明るくなっていく。
「……そうか……あいつら、やったのか……」
瀧は穏やかな顔になる。目的を成就させた、達成感に溢れた表情。計画通りだった。ゲリラや中共の敵貞処の連中を利用しつつ、日本の中枢に迫るが、それは囮。建御雷からの超遠距離射撃が、計画の真打ちであった。たかが敵貞処の連中程度で、東機関に勝てるとは思っていなかった。しかし、大きな混乱を起こした事で、日本の中枢に居る連中をこの東京に釘付けにする事には成功した。シェルターすら焼き尽くす荷電粒子重砲の威力ならば、綺麗さっぱり現体制を抹殺する事が出来るだろう。そして何より、東機関の“人でなし”どもが、自分の襲来を受けて、東京に集まっているはず。自分から現体制を守る為に、全戦力を東京に終結させているはずだ。つまり、自分もろとも、日本が生んだ“人でなし”どもは無に帰るーー
全て、リセットだ。
「……俺の勝ちだな」
いつの間にか、周囲に溢れかえった光に細胞の一つ一つを焼き尽くされていきながら、瀧は許された表情で微笑んだ。
その微笑みに、上戸も微笑みを返した。
「……さようなら、瀧くん」
「……またすぐに会うだろ、地獄でさ」
その瞬間に、もう何も見えなくなった。
エネルギーの濁流が一気に押し寄せ、東京をすっぽりと飲み込み、全てを無に返していった。
ーーーーーーーーーーーーーーーー
寺に備え付けの箒とちりとりで周囲を掃き、バケツに水を汲んできて花を刺す所の水を取り替え、新しい花を刺す。線香に火を点けると、花の匂いと混ざり合った、何とも微妙な匂いがした。
黒のスーツに華奢な体を包んだ遠沢は墓石に手を合わせる。石に刻まれた文字は風化してよく読めないが、“長岡”と書かれた部分だけは分かる。
「またこんなクソ田舎まで墓参り〜?まだ“東京事変”の報告書だって完璧に出来てないのに〜」
少し間の抜けた男の声がして、遠沢が振り向くとそこには相変わらず、男前の癖に何故か胡散臭い顔つきをした眼鏡男・古本の姿があった。
遠沢は、地味な服を着ているにも関わらず雰囲気が軽い古本に小さくため
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ