第十二話 終局
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けたその体は、既に本木ではなかった。本木だったもの、になっていた。
「ぐっ……」
長岡も、自分の腹に空いた大穴から血を垂れ流し、何度も血を吐いた。このままでは明らかに致命傷である。しかし、長岡はこの艦であと一人だけ生き残っている遠沢が助けに来る事など、全く期待していなかった。むしろその逆。この場に遠沢が来ない事を祈っていた。血と一緒に精力までもを失いつつある体に鞭を打ち、血にまみれつつある管制室の床を這って行った。
(日本が生み出した“人でなし”は始末したが……始末されるべきはこいつらだけじゃない……)
長岡が目指す先には、荷電粒子重砲の発射ボタン。
(人を裁くのは人だろ……こいつらみたいな人でなしじゃあなく……)
長岡の中では、今その二つは矛盾する事なく並び立っていた。
一つは、この一連の騒ぎを起こした、建御雷の幹部連中を叩き潰し、建御雷を奪回する事。それは、たった今本木を殺した事によって既に達成されていた。
もう一つは、取り戻した建御雷の力をもってして、日本の中枢に巣食う連中を抹殺すること。……これは、本木達の目的そのものだったが、本木達を全員殺した今、長岡は今それを目指している。……矛盾しているように思えるが、長岡の気持ちの上では、何の矛盾も無い。
許せなかった。
自分達の不幸な境遇を呪い、日本への復讐を目論んで関係ない者も平気で巻き込み、そして何より自分の気持ちを裏切った本木達も。
そして、本木達のような化け物達を生み出して、平気で使役している連中も。
その両方が許せなかった。
長岡はコンソールに這いつくばるようにして自分の上体を起こした。コンソールが血に濡れる。激しい動きに、口の中に血が溢れる。視界が霞んだ。霞んだ視界の中にも、あかあかと点灯している発射ボタンはハッキリと映る。
(……あぁ、でも……これを押したら俺も、十分人でなしの仲間入りかな)
長岡は、心の中でぼんやりと呟いた。
しかし、その手は、ボタンに対してまっすぐ伸びる。コンソールに突っ伏すようにして、長岡はそのボタンを、しっかりと押し込んだ。
艦が荷電粒子重砲発射の反動に、大きく揺れた。その轟音を聞きながら、長岡の意識はゆっくりと薄れていき、視界はどんどん真っ白くなっていった。
「……」
動かなくなった長岡の背中に、いつからか管制室のドアの前に立っていた遠沢が、何も言わずに敬礼を送っていた。
ーーーーーーーーーーーーーーー
ガチィ!
バチィ!
サーベルと日本刀が何度も何度もぶつかり合い、火花を散らす。
最強の物真似師・上戸と、最強の戦士・瀧との格闘戦は、双方譲らず。
いつ終わるかも分からない、消耗戦になっていた。
「!!」
「もらった!
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