悪魔の島編
EP.18 ウルティアの誘い
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としか思えない集落に、村人たちが喜びに沸く姿だった。
驚愕するワタルのつぶやきが聞こえたのか、1人の村人――紫色の月の影響か、角と尻尾が生えている――が駆け寄る。
「あ、妖精の尻尾の魔導士さん! 見てください、村が元通りになったんです!」
「あ、ああ……戻った? 前と全く変り無い状態に、か?」
「はい。家から店の売り物まで何一つ変わっていない、私たちの村です!」
「そうか……」
嬉しくて仕方ないという満面の笑みで話す村人とは対照的に、ワタルの胸中は複雑だった。
「(ウルティアめ、やってくれる……)」
何も変わっていない状態に戻ったという事は、十中八九“時のアーク”、下手人はウルティア以外には居ない。
時間的に見て、デリオラ崩壊のどさくさに紛れて洞窟から姿を消したすぐ後、彼女の後を追ってきた自分と戦う前に村を戻したのだろうとワタルは見当を付けた。
つまり彼女は、ワタルを待つ片手間に小規模とはいえ、1つの村を再生させたのだ。
ワタルの正体を知り、ゼレフを狙う失われた魔法使い。
他にも何らかの目的があって評議院に潜伏している彼女だが、それでも村を再生させた。
だからといって彼女に対する数々の疑念を晴らす程、ワタルはお人好しでも楽天的でもない。
しかし、例え暇つぶしの気まぐれであったとしても、目に見える形で善行をされれば、疑念は抱けても敵意を抱きにくい。
それが甘さだと自覚してはいたが、だからといって彼女を完全に悪人と断じて割り切れるほどドライでもなかった。
「――あの……聞いてますか?」
「え……ああ、悪い。なんだ?」
「いえ、その……依頼の方がどうなったかを、ですね……」
思案していたワタルは村人の声で我に返る。
村人は村が再生した喜びから一変、不安げな表情で以来の進行状況をワタルに尋ねた。
ワタルは又聞きでしかないが、彼らは紫色の月の光の影響で心まで悪魔と化して理性を失ってしまい、そうなってしまえば同じ村人に殺されてしまうという危機的状況にある。
それは村人全員が抱える不安で、その焦燥は700万Jという高額の報酬にも表れている。
この数字がそのまま村人たちの不安を表している訳ではないにしても、決して軽い気分で出せる額ではない。ガルナ島のような無人島にある小規模の村なら尚更だ。
村人の抱える不安を察し、予想外だったとはいえ個人的な事情に傾倒していたことを恥じるワタル。
だが彼の頭の中では、この依頼の解決法がある程度ではあるが纏まっていた。
「解決法はもう見つけてあるんだ」
「ほ、本当ですか!?」
「ああ。だが、まずは仲間たちと合流しなくちゃな……」
「では、私がひとっ
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