悪魔の島編
EP.18 ウルティアの誘い
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高すぎても低すぎてもダメという加工に必要な適正温度というものがあり、急激な温度変化は容易くひび割れや崩壊を招く。
それと同じで、“魂威”で自分の魔力を水晶に通して操作し、“時のアーク”を乱したのだ。
「魔法解除まで……汎用性が高すぎるわね」
「コントロールキツイし、ある程度の制約はあるがな」
強大な魔法を魔法解除しようとすれば、それだけ多くの魔力を必要とし、繊細な魔力コントロールも要求されるため、難度は高くなる。
直接触るという“魂威”の特性上、炎や雷に対する魔法解除は魔力によるコーティングを同時にこなさないといけない。痛いから。
物体の修復という、“時のアーク”の中では基本に位置する魔法で、水晶球という触る事が出来る物体に作用するものだったからこそ、比較的簡単に魔法解除ができたのだ。
とにかく、水晶を無効化させ、漸く彼女の余裕の表情を崩せたことに、ワタルは会心の笑みを浮かべる。
だが、ウルティアの狼狽はすぐに立て直され、彼女の心底残念そうな言葉がワタルの耳朶を打った。
「本当に残念ね……あなたの未来がどこに向かって進むのか、興味があったのだけれど」
「俺は興味無いがな」
「自分の未来なのに?」
「未来なんてない。あるのは過去と現在の積み重ねだけ……俺は――!」
ウルティアはすでに攻撃手段を無くしたと判断し、ワタルは魔力を手にみなぎらせ、走り出す。掌からは魔力が弾け、炎が燃えるような音が鳴る。
「全力で、今を生きるだけだ!」
「それがあなたの狂気の使い道ね!」
「何とでも――うお!?」
自分と同じような狂気を持つものと断じ、なお現実を生きようとするワタルを嗤うウルティアは地面を強く踏むが……何も起こらない。
絶好のチャンスに、渾身の“魂威”を当てるその刹那……ワタルの足元の地面が浮き上がった――否、断層を起こした。
“時のアーク”の制約は生物に通じない事のみ。もちろん『衝撃』は制約から外れる。
ウルティアは瞬間的に衝撃を過去と未来を行き来させることで溜め込んで一気に放出、地面を隆起、断層を起こしたのだ。
すぐに効果の出る魔法では、感知に長けたワタルに対応される。その対策として使ったこれは、魔法を使ってもすぐに効果が出ないため感知が難しい。
普段なら、地下で蠢く魔力を感知し、警戒に移る事が出来たワタルだが、今は島の上空に月の雫による濃い魔力の膜ができているため、意識しなければ気付けない。
最初の足踏みで魔法が失敗したと勘違いしたワタルは時間差攻撃に不意を突かれ、宙に投げ出される。
「まだだ!!」
数メートルほど隆起した地面から投げ出されたワタル
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