トラブル=バレンタイン
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ないかもしれないとも思ったがそれでも行かなければならない。そうでなければ昨日夜遅くまでチョコレートを作った意味がない。それに今日のことは付き合うようになってからずっと考えていたことであったのだ。
絶対に渡さなければならない、彼女は思った。そしてラーメン屋を出ると足早に西一丁目の公園に向かうのであった。だが彼女を阻む障害はまだ存在していた。
通学路の道で通せんぼに遭った。時間が遅いせいか車の量が多くとても通れなかったのだ。
「まずいなあ」
余計に時間が気になる。車は何時まで経っても切れそうにない。早苗はそれを見て不安を募らせていった。
どれだけ待ったかわからないがやっと車が切れた。彼女はそれを見計らってようやく道を渡った。また時間が過ぎてしまっていた。
それでもやはり行かなければならない。公園には岳が待っているしやはりチョコレートがある。とにかく行かなくては今日という日の意味がないし付き合ってきたことも意味がなくなる。彼女は足早どころか駆け出してしまっていた。
「急がなきゃ」
こう思った。だがそれが間違いであった。
暗い夜道を暫く駆けていた。灯りはあるが朧であり足下ははっきりしない。早苗はそれを忘れてしまっていた。
こけた。思いきり前のめりに倒れた。鞄も前に放り出してしまい大きく倒れてしまった。
「痛っ・・・・・・」
右膝に痛みが走る。どうやらすりむいてしまったらしい。それに鞄も手を離れてしまった。
骨に痛みがないからどうやら擦り傷らしい。それに内心ホッとしながらも辺りを探った。鞄がなくてはどうにもならないからだ。
「あっ」
探していると何かがあたった。だがそれは鞄ではなかった。冷たい石であった。
「違うの・・・・・・」
早苗はそれを暗がりに慣れてきた目で見てまた溜息をついた。よく見ればそれはいつも見ているお地蔵様であった。残念ながら鞄ではなかった。
「お地蔵様かあ・・・・・・」
何かバレンタインには場違いに思えた。だがそれはすぐに過ぎ去り急に心が静まった。それはお地蔵様に触れたからであろうか。
早苗は何となく落ち着いてきた。膝は痛むがそれでも何か安心してきた。そして辺りを見回す。
見れば足下に鞄が落ちてあった。早苗はそれをに気付くと手を伸ばした。
「こんなところにあったの」
目も慣れてきていた。もうお地蔵様の顔がはっきりと見える。お地蔵様の優しい顔を見ると今度は笑いたくなった。にこりと。
「お地蔵様」
早苗はお地蔵様に声をかけた。彼女はこの時穏やかな笑みを浮かべていた。
「有り難う、何か元気が出て来たわ」
そう言いながら立ち上がる。そして制服についた砂を払う。
それからまたお地蔵様に顔を向ける。頭をぺこりと下
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