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ダプニス
ダプニス
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や原の緑を映し、表情は常に爽やかで笑みを忘れなかった。黒い髪は巻いており、黒い目からは強く明るい光が消えなかった。彼はいつも野原や野山を駆け回り、笛を吹き、歌を唄った。自由を愛し、その中に身を委ねていた。兄と共に常に自由を謳歌していたのであった。
 彼が歌うとそれだけで木々や花々が活気付いた。そして彼の歌声が山や原を覆うと温かくなり、そこにいる全ての生き物が心を奪われた。心優しい彼は牧童達の為にも歌った。これが牧歌となった。
 自然の中にいた彼はその自然に愛されていた。だが彼はそれには気付いてはいなかったのであった。それにある女神が気付いた。
 アプロディーテーであった。愛と美を司る女神である彼女はそれに気付くと自らの職務もあり彼にあることを思いついた。愛を教えようというのだ。その時ふと恋人と別れたばかりの美しい花のニンフのことを思い出した。そして彼女の側に向かった。
「エケナイス」
 彼女は野原で一人泣いている少女に声をかけた。
「はい」
 少女はそれを受けて顔をあげた。淡い赤の髪に緑の目を持っていた。顔立ちは幼さがまだ残っているが穏やかな表情であり、そこには無垢さとあどけなさが感じられた。そして草色の服を着てその下には透き通る様な白い肌を持っている。一目で心を奪われかねない可愛らしい姿であった。
「もう悲しむのは止めなさい」
 アプロディーテーは彼女に優しい言葉を送った。
「ですが」
 それでも彼女はまだ泣いていた。
「私にはもうあの人は戻ってきませんから」
「過ぎた恋のことは忘れてしまいなさい」
 女神はまた言った。
「これからは。新しい恋に生きるのです」
「新しい恋」
「ええ」
 女神はにこりと頷いた。
「女の子は笑っていなくては駄目なのです。悲しむことは私が許しません」
「ですが」
「ですがもこうしたもないのです。これは愛と美の女神の言葉なのですから」
 言葉は強制であったが口調そのものは穏やかであった。女神はあくまで彼女のことを思っていたのだ。
「貴女には新しい恋を用意してあります」
「それは」
「ダプニスは知っていますね」
「はい」
 彼女も野原に住む花の妖精であるのなら知らない筈はなかった。ダプニスは彼女達にとっては永遠の恋人なのであるから。彼がそのことを気付いていないにしろ、だ。
「彼の元へ行きなさい。そうすれば新しい恋がはじまります」
「新しい恋が」
「そう。そして生きるのです。いいですね」
「わかりました。それでは」
「はい」
 こうして彼女は女神の薦めに従いダプニスの下へやって来た。彼はこの時兄であるパーンと二人で笛を吹いて遊んでいた。
「また上手くなったな」
 兄は弟の笛を認めてこう声をかけてい
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