第五章
[8]前話 [2]次話
後藤も驚いてだ、こう言うのだった。
「何と、三好清海殿が来られたのか」
「はい、この場に」
「まさか生きておったとはな」
「十勇士全員がとのことです」
文次郎は又兵衛にこのことも話した。
「そして幸村様も」
「あの御仁もか」
「秀頼様をお連れして薩摩まで逃れられたとのことです。長宗我部盛親殿もおられると」
「薩摩は元々徳川を憎んでおる」
このことは又兵衛もよく知っている、薩摩は幕府の潜在的な敵である。だからこそ幕府も熊本に熊本城を置き備えているのだ。
「何かあればな」
「挙兵ですな」
「それがある」
又兵衛は鍬を止めていた、そのうえで言い切った。
「若しもの時はな」
「それでなのですが」
「会おう」
又兵衛は一も二もなく述べた。
「生きておられるなら是非もない」
「それでは」
こうしてだった、又兵衛は三好と会うことになった。寺の本堂の中で彼と向かい合いそのうえで話を聞いた。その話は彼が思った通りのものだった。
幸村は戦の中かろうじて生き延び十勇士達と共に秀頼を救い出し薩摩藩の軍勢に密かに入りその船で薩摩まで落ち延びたとのことだ。そして長宗我部の者達も何とか薩摩藩の助けで落ち延びて今は彼等は薩摩藩に身を潜め幕府と再び戦うことを待っているとのことだった。
その話をしてからだ、三好は又兵衛にこう言った。
「では後藤殿も」
「わしもというのじゃな」
「薩摩に来て頂けますか」
こう彼に言うのだった。
「そうして頂けますか」
「薩摩にか」
「そうです、そして殿と共に」
「時が来ればじゃな」
「再び徳川と戦いましょうぞ」
三好は強い声で又兵衛に言う。
「そうしましょうぞ」
「殿、どうされますか」
家臣達も本堂の中に集まっている。その中で主に問うたのだった。
「ここは」
「薩摩に行かれますか」
「そして再び徳川と戦われますか」
「そうされますか」
「そうじゃな」
又兵衛は彼等の言葉も聞いた、厳しい顔で僧衣の中で腕を組んでいる。
[8]前話 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ