第九章
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「ガウェインならと思ったけれど」
「やってくれたわね」
「試練を越えて」
「そのうえで」
こう話していた、しかもその出している言葉は。
老婆のものではなかった、若く美しい女のそれだった。その声を老婆の姿で出していたのだ。それも楽しそうに。
「流石と言ったところかしら」
「円卓の騎士でも最高の騎士の一人だからこそ」
「今回も果たせたわね」
「私達の試練も超えて」
「エレインの助けもあったけれど」
「薬を手に入れられたわね」
「無事にね」
このことを喜んでいる言葉だった。
「では次の試練もね」
「無事に越えられるわね」
「今度はさらに大きな試練だけれど」
「聖杯を探すという」
「もっとも彼はね」
老婆の一人がここでこんなことを言った。
「聖杯は手に入れることはできないけれど」
「ええ、聖杯を手に入れる騎士はね」
「もう決まっているから」
だからだ、ガウェインは聖杯を手に入れることは出来ないというのだ。
「パーシバルだから」
「彼しかいないから」
「清らかな愚か者である彼だけが聖杯を手に入れられる」
「それ故に」
それだけは無理だというのだ、しかしだった。
「ガウェインは聖杯を探す旅でも重要な役割を果たすわ」
「それを果たせるだけのものがあるわね」
「この試練も越えられたから」
「次の試練も」
その聖杯を探す旅の時の試練もだというのだ。
そうしたことを話してだ、老婆達は。
その姿を変えた、若々しく艶やかな美女達のそれに。着ている服もフードのあるローブから見事なドレスになっていた。
その中のとりわけ艶やかな女がだ、微笑みつつ言った。
「不思議なことね、私達も」
「そうね、モルガン=ル=フェイ」
「私達は自分でもおかしなことをしていると思うわ」
他の二人の美女もこうその美女モルガンに応えた。
「円卓の騎士達が憎いのに何処か助けてしまう」
「ガウェインにしても」
「邪魔をすれば薬は手に入れられなかったのに」
「それでもね」
「ついつい助けてしまうわね」
「私はアーサーも騎士達も憎いわ」
モルガンは微笑みつつ言った。
「けれどね」
「それでもね」
「どうしてもね」
「助けずにはいられないわ」
どうしても、というのだ。
「だから今もね」
「ガウェインを助けた」
「そういうことね」
「そうね。ではね」
「ええ、竜にもお礼を言って」
「気を効かせて私達に合わせてくれた彼にそうして」
そのうえで、というのだった。
「今は私達の場所に帰りましょう」
「あの城にね」
「さて、次は何をしてあげようかしら」
微笑んで言ったモルガンだった。
「そのことを城でお話しましょう」
「その為にも」
「今は」
こう話してだ、そのうえでだ
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