第六章
[2/2]
[8]前話 [9]前 最初
言う。すぐ隣に寄り添うように座っているが視線は逸らしているのだ。そうした態度もどうにも素直でないものだった。
「食べていいから」
「うん」
その言葉に頷いてからサンドイッチを手に取り口に入れる。すると。
「あっ」
美味しいのだ。しかもかなり新鮮だ。とても昨夜の残りものなぞではないのがわかる。
それを絵梨奈に言おうとする。ところが彼女が先を制してきた。
「美味しい?」
「う、うん」
「お母さんが作ってくれたのよ」
さっきとは全然違う言葉だった。
「品物のお金出してくれて切るのとか作るの実際に横で見てくれえ。それで」
「それってつまり絵梨奈ちゃんが」
「教えてくれたのはお母さん」
あくまでそう主張する。
「私はいただけ。いいわね」
「そうなんだ」
「けれど。嬉しいわ」
今度は視線を聡とは正反対の方にやってぽつりと言った。
「食べてくれて」
「だって。折角作ってもらったんだし」
聡もそう答える。
「それだとね。やっぱり」
「食べてくれるのね」
「うん。それでよかったらさ」
ここで彼は言った。
「また。作ってよね」
「え、ええ」
その言葉を言われると顔を真っ赤にさせてきた。まるでさくらんぼの様に。
「お母さんに頼んでおくわ」
「御願いね。お母さんに」
「仕方ないわ。頼んであげる」
照れ臭そうに言う。けれど二人共悪い気はしなかった。口には出さなくとも心は伝わっていたからだ。もうそれで充分だった。
ツンデレ 完
2007・9・7
[8]前話 [9]前 最初
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2025 肥前のポチ