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ツンデレ
第六章
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言う。すぐ隣に寄り添うように座っているが視線は逸らしているのだ。そうした態度もどうにも素直でないものだった。
「食べていいから」
「うん」
 その言葉に頷いてからサンドイッチを手に取り口に入れる。すると。
「あっ」
 美味しいのだ。しかもかなり新鮮だ。とても昨夜の残りものなぞではないのがわかる。
 それを絵梨奈に言おうとする。ところが彼女が先を制してきた。
「美味しい?」
「う、うん」
「お母さんが作ってくれたのよ」
 さっきとは全然違う言葉だった。
「品物のお金出してくれて切るのとか作るの実際に横で見てくれえ。それで」
「それってつまり絵梨奈ちゃんが」
「教えてくれたのはお母さん」 
 あくまでそう主張する。
「私はいただけ。いいわね」
「そうなんだ」
「けれど。嬉しいわ」
 今度は視線を聡とは正反対の方にやってぽつりと言った。
「食べてくれて」
「だって。折角作ってもらったんだし」
 聡もそう答える。
「それだとね。やっぱり」
「食べてくれるのね」
「うん。それでよかったらさ」
 ここで彼は言った。
「また。作ってよね」
「え、ええ」
 その言葉を言われると顔を真っ赤にさせてきた。まるでさくらんぼの様に。
「お母さんに頼んでおくわ」
「御願いね。お母さんに」
「仕方ないわ。頼んであげる」
 照れ臭そうに言う。けれど二人共悪い気はしなかった。口には出さなくとも心は伝わっていたからだ。もうそれで充分だった。


ツンデレ   完


                    2007・9・7

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