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その魂に祝福を
魔石の時代
第二章
魔法使い達の狂騒劇5
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今頃頭がなくなっていたところだ。
 それにしても、よくない流れだ。完全に相手に主導権を握られてしまっている。流れを変えなければ、このまま押し切られる。
(この間合いでは不利だ……)
 近接戦では向こうが一枚上手だ。だが、遠距離……自らが得意とする間合いで戦えれば――少なくとも拮抗できる。拮抗さえできれば、勝機は必ず訪れる。自らに言い聞かせ、大きく距離を取る。
「スティンガー――」
 相手の攻撃は大ぶりで、連続性に欠ける。つまり、いったん距離を開けば、追撃はない。その隙に、流れを取りかえす。それを狙い魔力を収束させる。だが、まだ主導権は向こうが握ったまま。何より、簡単に渡してくれるような軟な相手でもなかった。こちらが魔力を収束させるその一瞬で、異形の腕が魔力を喰らいさらに一回りも大きくなる。次の瞬間、魔導師の姿が消えた。
「しまっ――ッ!」
 高速移動。いや、短距離の空間転位か。どちらでもいいが――間合いが詰められた。発動寸前の魔法を強引に打ち切り、防御に切り替える。その瞬間には、拳が放たれた。
「―――ッ!?」
 打撃を受けた場所から背中まで、間にある骨も臓器も何もかも無視して衝撃が突き抜けていく。肺が締めあげられ、悲鳴にもならなかった。ぎりぎりでも防御できていなければ、そのまま死んでいたに違いない。いや、いっそその方がマシだったか?――余りの激痛にそんなことさえ考えていた。だが、何であれこれで――
(間合いが――開いた!)
 急激に相手が遠ざかっていく。拳が当たった瞬間にはそう見えた。実際は、自分が後ろに飛んでいるのだと理解したのは、海沿いのフェンスに叩きつけられてからだった――が、何であれ間合いが開いた。それだけ分かれば充分だ。
「スティンガースナイプ!!」
 ここは自分の間合い。激痛は無視して、魔法を放つ。しかし、その一撃も起死回生にはならなかった。それどころか、一瞬の足止めにもなってくれない。僕の魔法が貫くより早く、相手は闇となって霧散し――自分のすぐ目の前で再び実体化した。その手には再び異形の双剣が握られている。
「―――」
 狙いは明確だった。何の躊躇いも無く、こちらの首を狙っている。魔法による防御は間に合わない。このダメージでは、体術による防御も回避も望めない。最悪な事に、魔法を放った反動で、デバイスさえとり落としていた。つまり、
(死――)
 明確な結末を思い描く直前、
「ダメえええええっ!」
 白い背中が、僕らの間に飛び込んできた。その瞬間、初めて相手の顔に動揺が浮かぶのが妙にはっきりと見えた。だが、動きは止められないらしい。その瞬間には、腕が振るわれた。――が、どうやら剣の方を霧散させたようだ。白い少女は無事だった。 
「お・ま・え・はぁぁぁあぁあああっ」
 黒衣の――人の事は言えないが――魔導師
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