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その魂に祝福を
魔石の時代
第二章
魔法使い達の狂騒劇5
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 吸血鬼姉妹にまつわる騒動に一応の決着をつけてからしばらくして。何の気まぐれなのか、自分は彼女達の屋敷に招待されていた。まぁ、招待されたと言っても兄の――つまり、当主の意中の人である恭也のおまけのようなものだったが。
 遥か昔、色々と理由があって覚える羽目になった食事作法を何とか思い出しながら、招待された豪勢な夕食を済ませてからの事である。
「何が?」
 お前は怖くないのか?――そんな問いかけに、当主はきょとんとした顔で言った。これはどう見ても……まぁ、本心だろう。驚くべき事に。自分の方が途方に暮れたような気分で、呻く。
「私は吸血鬼よ?」
 俺は魔法使いだぞ?――その呻き声に、当主はあっけらかんと笑って見せた。別に女達を魔物として排除する気など欠片もないが……どちらがより異能かと言われれば、それは間違いなく自分の方だ。魔法使いである上に、不死の怪物でもある。それ以前に、殺しに慣れきった殺戮者でもあるのだから。
「私は生きてるわよ? それに、長生きする事に関しては自信があるわ」
 意図して答えをはぐらかされているのは明らかだった――が、その真意が読めない。身辺警護をさせたいのか、とも思うが……そのために魔物殺しが専門である自分を傍に置くのは本末転倒だろう。
「難しく考えないで。あなたには本当に感謝しているのよ。この前の事だけじゃなくて、他にも色々とね」
 あの御家騒動以外に何か彼女達に感謝される様な事があっただろうか?――記憶を掘り返してみても、思い当たる節はない。今回ばかりはリブロムの記述も無力だろう。やれやれと呆れた様子の恭也が気にはなるが……特に何かを答えてくれる様子もなかった。
 ともあれ。食事の礼くらいはしなければなるまい。
 あれこれと考えた結果、元々造る気だった屋敷の異境の他に、猫の姿を模した魔法生物を何体か託す事にした。かつて『マーリン』はこれを巧みに扱い、世界を蹂躙した訳だが……幸か不幸か今の自分にはそれほどの力はない。この魔法生物も見た目相応程度の力しかなかった。それでも、情報収集くらいはできるだろう。代償も、精々が血を一滴二滴与えてやれば事は足りる。彼女達の『特殊な血』ならなおさらだ。
「まったく、お礼をするつもりで招待したのに」
 帰り際、何やら憤慨した様子で当主は言った。もっとも、魔法生物は抱いたままなのだから、取りあえず気に入ってもらえたと言う事なのだろうが。
「何でここまでしてくれるの?」
 食事の礼だと素直に答えたら、何やら呆れられた。異界の性能の説明をした時の恭也もそうだったが、失礼な奴らだ。異境にしても魔法生物にしても、そう簡単に造れる代物ではないのだが。
「……まぁ、元々あの程度でお礼を済ませるつもりはなかったんだけど」
 深々としたため息と共に、当主は言った。
「覚悟し
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