暁 〜小説投稿サイト〜
ストライク・ザ・ブラッド 〜神なる名を持つ吸血鬼〜
錬金術師の帰還篇
32.怒りの神意
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 その瞬間だった。天から一筋の光が地上めがけて降り注いだ。それに一瞬遅れて爆発音が響き渡る。落雷だ。
 それは修道院の手前、彩斗たちがいるわずか一メートル先に落下した。

「おっと、危ないじゃないか」

 その場に似つかわしくない笑みを含んだ冷淡な声がした。
 声の主は、白いコートを着た錬金術師の青年だ。
 特徴的な赤白の帽子と銀色のステッキを身につけていないが、だからといってこの男を見間違うわけがない。天塚汞だ。

「戻ってきて正解だったな。まさか、そんなふうに隠れていたとはね」

 彼は彩斗たちのほうに悠然と歩いてくる。
 この状況で彩斗とこの男が接触するのは本当にまずい。
 友妃と雪菜が動こうとした。
 だが、その考えとは逆に彩斗の魔力は身体へと収縮されていく。
 暴走がおさまったのかとも考えたが、いまだ空は漆黒に染まり、大地は震える。
 まだこの現象を引き起こしている眷獣は眠りについたわけではない。

「失せろ……偽物(ダミー)やろう」

 その瞬間、再び天から眩い閃光が天塚めがけて降り注いだ。わずかに反応した彼だったが光の速度に反応できるわけもない。轟音が鳴り響いた。

「え……」

 言葉にすることも出来なかった。
 彩斗が出現させている魔力の正体。それは彼自身の魔力ではなくまるで眷獣が自身の魔力を彩斗の身体を通して無理やりこの世界に出現させているような感じがする。
 天塚の身体は雷が直撃して僅かに痙攣している。白いコートと赤白の帽子は焼け焦げ、黒く染まっている。
 彩斗は一撃で天塚を戦闘不能にしたのだ。しかも自分の手を使うこともなく。

「ひどいな……これじゃあ、原型が保てないじゃないか……」

 それでもまだ動けるのか天塚は自分の心臓の代わりに埋め込まれていた黒い宝石を砕く。
 それが引き金になったのか、天塚の輪郭が唐突に歪んだ。
 人間の形が崩れて、ドロリとした漆黒の流動体へと変わっていく。不定形の液体金属の塊に。

「なんだこいつは……?」

 古城がうめいた。

「まさか……“賢者の霊血(ワイズマンズ・ブラッド)”……!?」

 雪菜が戦慄したように呟く。聞き覚えのある言葉に、友妃はギョッとした。
 それでも彩斗は表情一つ変えずに右手だけをわずかに動かした。

『Ooooooooooooooo……!』

 かつて天塚だったものが叫んだ。
 パキッ、というなにかが折れたような音が鳴り響いた。空気が冷たい。この絃神島では感じないはずの感覚のはずだった。
 だが、空気は凍えている。いや、これは大気が凍ているのだ。
 それも漆黒の流動体の周りは時でも止まっているように完全に動きを止めている。

「……失せな」

 その場の空気よりも
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