繋いだ手は一つ、繋ぎたい手も一つ
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柔らかい日常、というのがこれほど心地いいと感じるのはいつもの事。
頭に浮かぶ戦の事さえ無ければ、全てを平穏に回せるのに……と、桂花はお茶を飲みながら思った。
目の前では、もふもふとおいしそうにおやつを食べる雛里。昼間の雛里は愛らしく、抱きしめたくなる衝動にいつも駆られる。とは言っても、夜はその贅沢を独り占めしているのだが。
欲を言えば、此処に華琳がいれば尚いいのだが、今は遠く離れ、直ぐに会う事など出来ない。
きっと次の戦の思考を凛々しく積み上げているのだろうなと、悩ましげに主に想いを馳せる彼女は吐息を一つ零した。
彼女達にとって特殊食器であるフォークがピタリと止まった。雛里はじっと、桂花を見つめる。
「おいしいでしゅ」
「……っ! そう、なら良かったわ」
「桂花さんがほっとけぇきを作れるなんて思いませんでした」
「これ、材料さえあれば結構簡単なのよ? まあ、店長の特殊材料があってこそだけど」
「ふふ、お料理は愛を注ぐとよりおいしくなるんです。だから、ありがとうございます」
ほにゃ、と笑った雛里に心臓を打ち抜かれた。心配してくれる気持ちは伝わりましたよ、と感謝を返された。
――ああ……なんて可愛いの! やっぱり妹に……ダメ、ダメよ荀文若! 落ち着きなさい。我慢しないと……友達、そう、友達なの。私はこの子の……
そこまで考えて、桂花はチクリと胸が痛んだ。考えるのは、これから助ける友二人の事。
――夕、明……私はあんた達みたいに人の心を容易く見抜けない。どうしたらこの子の冷たい日々に安らぎを多く齎せる? どうしたら私がこの子に温もりを与えてあげられる? あんた達だったら、どうする?
問いかけを浮かべては消し、浮かべては消し……確かな答えは見つからない。
なんでもない日常を経験させてはいても、雛里は孤独に空を舞う鳥のように見えて、安らげる場所を求めて彷徨っているようにも感じていた。
二人ならどうするかと考えても、彼女達では無いので思い浮かばない。自分の思いつく限りしか……出来ない。
「桂花さん……」
聡く、雛里は桂花の表情から悲哀を読み取った。せっかくの笑顔も曇り、それがまた、桂花の心を落ち込ませる。
「ち、違う……っ……雛里のせいじゃないの。ちょっと、その……夕と明の事、考えてて……」
ある意味正しい言葉。考えていたのは雛里に関してであったが、彼女達の事も含まれるが故に。
ハッとした雛里は……むーっと唇を尖らせた。彼女は重要な事を思い出したのだ。
「……田豊さんと張コウさんの事、もう一度詳しく教えてください。出来れば今日は人となりが分かるお話、桂花さんとの出会いとかがいいです」
「ど、どうしたの急に?」
「これから戦をする相手の詳細を知っておこ
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