繋いだ手は一つ、繋ぎたい手も一つ
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。じゃあこう返そう。私のお母さんは最近体調がよろしくない。私は大切な人を助けたいだけ。体調が回復するまでの協定のようなモノ。その時にきっと、お母さんはあなたにこう言う」
『好きなように生きて、好きな主の所に仕えなさい。名では無く心に、血では無く能力に、光を求めなさい。そうして標され支配される事で、私達軍師は心満たされる高みへと羽ばたけるのだから』
ぼそぼそと耳元で囁かれた言葉に目を見開いた。
親たるモノの愛情。且授は孤児を育てるような人間であった。子供達には望むままに生きて欲しい……その願いが桂花にも向けられる、と言っている。
ならどうして、且授は袁家に仕えているのか、と聞いても答えは出ている。
且授は前の主への忠義を果たしているのだ。今もまだ主への忠を守って、腐り始めた袁家を戻そうとしているのだ。
ああ、ああ……なんと美しい忠義の心。桂花は心底から、その心に憧れを抱いた。自分もそうなりたい、絶対の忠誠を誓う主に仕えたいと願った。
羨ましい、と思うと同時に、ただ一つ疑問に思う事が出てくる。
「じゃあなんであんたは此処にいるのよ。其処まで想ってる且授様の言を守らないのはどうして?」
眉根を寄せて問うてみた。
夕の瞳に昏い光が差した。それは桂花の見た事の無い、純粋ながら濁り切った闇色の輝き。
「……私は欲張りだから」
ただそれだけ。それ以上は何も言う気がないようで、ふいと目を逸らされた。
読み取ってやろう、思考を回そう、とする前に一つ指を目の前に立てられ、先手を取られる。
「問題はこの取引きをどうするか。怪しまれるからお母さんと話せはしないけど、あなたが上に上がりたくなったら私が口を聞こう。ただ、あなたの荀家の血が大いに利用されると考えておくべき。私は孤児だから見下されてて、もう上にも上がったからそういうモノがあまり無いけど、きっとあなたは政略の的にされやすい。肥え太った豚に嫁ぐ気があるのなら、止めない」
ぶるり、と身体が震えた。怖気が背中を這い回った。髪の毛の先までぞわぞわと逆立った気がした。
――気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い、気持ち悪い。絶対に嫌! 男なんて、バカで、汚くて、誇りも無くて、頭の中が性欲にばかり傾いてるじゃない! 自分の身体を使って何かを得る? 女である事を利用される? 有り得ない! 私はこの頭脳でこそ自分を示したいの!
上が女ばかりでは成り立つわけが無く、男も少数であるが居る。飛び抜けた才ある者はほぼ無しと言っていいのがこの世界の哀しい現実。
歴史上の偉人が女ばかりであったり、既成概念として有力者には女尊男卑が根付いているこの世界。そのせいもあって幼少期から若干男を見下していた節はあるが、桂花は都で時機を伺っていたから余計にそれが激しい
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