繋いだ手は一つ、繋ぎたい手も一つ
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しくない仕事を与えているという。まさしく異常な事であった。
自分の昇進の邪魔をしているのか、と思ったが何処か違った気がした。
桂花の心には苛立ちが募る。試されている、というのが何より心を燃やした。
――どうせ……あんただって且授様の腰ぎんちゃくのくせに。何よ。孤児だったから、育てて貰った且授様が居たから、あんたはそこに居れるだけじゃない!
今の地位は親の七光りでしかないはずだ、と。自分だって……と敵対心が勢いを強めた。
上位関係から滅多な事は言えない。それでも彼女は生来の気性の激しさから、試し返す事を決めた。
「……仕事は完璧にこなしています。そして出来る限り“詰めた”つもりですが、もしやお気づきになられませんでしたか?」
桂花ほど優秀な者が、ただ手を拱いて淡々と仕事をこなすはずがあろうか。
彼女は、仕事をこなしながらも幾多の改善案を書簡の淵に滑り込ませ、下級文官の戯言よ、と切り捨てられないで且授の目に留まるのを待っていたのだ。
気付いているからこそ自分を此処に呼んだのだろう? 気に食わないなら左遷だろうとなんだろうとすればいい……と、彼女は挑発したのだ。
数瞬、夕は止まる。真っ直ぐに見つめてくる桂花の瞳を覗き込み、小さく満足げに鼻を鳴らし……バカにしたように口の端を吊り上げた。
「この程度で満足して貰っては困る。改善点が幾つもあった。もっと煮詰めてから出せばいいのに、焦り過ぎ」
「なっ……」
驚愕で目を見開いた桂花は、すっと差し出された書簡に付け足された事案を見て、息が詰まった。
自分よりも上手く回せる事案になっていた。煮詰めれば考え付く程度の細かい所であったと、自身の不足を思い知らされた。
それに……と夕は続ける。続けて出された一枚の書簡にある事案は、余分な浪費による甚大な国庫の支出具合について、と書かれていた。麗羽が街で散財している為だと、こっそり忍ばせてもいる。
「本初にお金を浪費させてる意味も分からないの? あなたは心が綺麗過ぎて、人心掌握への認識が甘すぎ」
絶句。
畳み掛けるように突き付けられた否定の言葉。何が悪かったのかと考えても出て来ない。目の前の少女は気付いているというのに。
悔しさにわなわなと震える手はいつの間にか書簡を握りつぶしていた。
その様子に、寝台の上で胡坐をかいた明はケタケタと笑った。
「ひひっ、あははは! 頑張り屋さんの荀ケちゃーん。おいたは程々にね♪ これが夕以外の目に留まってたら、骨の髄までしゃぶりつくされてたよ?」
精神を逆なでする声音にぞわぞわと気持ち悪さが肌の下を這い回る。下級武官如きが自分に話しかけるな、バカにするな! そうして彼女はまた、二人の術中に嵌っていく。
「どういう事よっ!」
「出る
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