繋いだ手は一つ、繋ぎたい手も一つ
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を出る事に決めた。
何処がいい、何処にしよう……悩んだ挙句に、彼女は手堅い一手を取る事にした。
『とりあえず名門と呼ばれている袁家に入ってみよう。三公を輩出している家なのだから、主もある程度は相応であるはずだ。抜ける時に人脈を増やしておくのも悪くない』
都の私塾を出て、家のコネを使って下級文官として仕える事となった彼女。
しかし……またも彼女は落胆の冷や水を浴びせ掛けられる事になった。
袁家は、都となんら変わらない場所であったのだ。唯一の例外は筆頭軍師である且授であったが、下級文官にとって彼女はさすがに雲の上の存在過ぎた。近付くには時間と力、接点が圧倒的に足りないのだ。
彼女以外は、都の内情をある程度目にしてきた桂花にとって下らないモノ同然。上層部が仕切り、保身と汚職に溢れ、期待していた主でさえバカと言うしかない金ぴか。
高笑いが廊下に聞こえる度に彼女は苛立ちに支配された。街で金を浪費している姿を見る度に、下らない、と毒づいていた。
そんな彼女は、麗羽の本質には気付いていなかった。否、見ようともしなかった。幼少期から作られた、麗羽が被るバカの仮面は厚く、誰にもバレる事は無い。それほど巧妙に隠されていたのだ。
毎日がうんざりの連続である為に、もう此処を出ようか、と考え始めた頃である。
彼女は夜分に一人の少女に呼び出された。
昏い色が渦巻く瞳、感情の読めない無表情、自分より背が小さいくせに自己主張のある胸。桂花が密かに敵対心を持っていた少女。
その少女は、彼女の上司である田豊――夕。筆頭軍師である且授の補佐役をしていたモノ。
下級文官程度でしかない桂花は話も出来ない。それほど、袁家の人材の幅は広く、何より夕は忙しかった。
急な呼び出しに驚くはずだが、当然と受け取って彼女はその部屋を訪ねていた。
「……仕事、つまらない?」
呼び出されて早々の一言がそれであった。寝台の上で寛ぎながら、パタパタと脚を交差させる赤髪の女、張コウ――真名を明がその言葉で動きを止める。
袁家では黒い噂は絶えない。容易に本心を零す事が躊躇われ、桂花はその少女と合わせていた碧の瞳を下にずらし、言葉を紡ぐ。
「御戯れを――――」
「隠さなくていい。あなたに現在当てている仕事は相応しくないモノばかり。あれ、わざとだから」
ピタリと、桂花の思考が止まる。
――この女は何を言った? わざわざ相応しくない仕事を与える? どうして? 使えないモノを最大限に利用して、潰れるギリギリまで馬車馬の如く働かせてから捨てるような鬼畜なのに。
事実、袁家を離れる人間はある程度の線引きに届かなかったモノばかり。使えるか使えないかと、人材を篩に掛けているのが夕であった。
そんな彼女がわざわざ、桂花には相応
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