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乱世の確率事象改変
繋いだ手は一つ、繋ぎたい手も一つ
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性。華琳は楽しみながらそれを封じようとするのは予測に容易いが、一歩間違えば破滅の危うい橋を渡る事になる。
 それを読み解き、事前に手を打って置くのが軍師である。危うさを理解していて何も手を打たずにいるなど、主の為を想う軍師と言えようか。

「……黒麒麟の隣に、ねぇ。確かに夕の人心掌握は黒麒麟と似た部分があるし、個人に対する思考誘導も上手い。黒麒麟を巻き込んで復讐に走るかもしれない。でも杞憂よ。だって夕は……」

 言葉が止まる。昔の事を話したほうが分かり易いのだと気付いて。
 不安そうな雛里の瞳を見ていると心に浮かぶ暗雲を取り払ってやりたくなった。

「はぁ……分かった」

 ため息を一つ。
 桂花はお茶を一口啜って口を潤した。休憩の時間を使って話す事では無いが、幸い急ぎの案件は無い。雛里が何かが気になって仕事が出来ない、なんて事は有り得なくとも、これを機に自分の心を整理しておくのもいい。
 夜は人の心をかき乱す。感情を心の内より溢れさせる事もあるのだ。だから、日輪に明るく照らされている今の内に、桂花は話しておこうと思った。

「昔話をしてあげる。私とあの子達との出会いを。欲張りなあの子の話を」
「ありがとうございます」

 申し訳なさげな雛里の笑みを受けて桂花は空を見上げた。
 まだ夕暮れには早い。その少女の真名の色が空に広がる前にと、ゆっくりと過去を紡いでいった。





 †





 彼女との出会いは桂花にとっては衝撃的であった。

 自身の才を世に役立てる為にと、知識を高め、思考能力を伸ばしに伸ばしてきた。
 都の私塾であっても自分より上はおらず、この程度か、と肩を落とす事もしばしば。
 荀家という名門の出自である彼女にとって、コネを使えばある程度の所にも士官は出来る。されども、彼女には野心があった。もうすぐ始まると予測に容易い乱世、そこに踏み入る軍師としては当然の野心であった。

『自身の全てを捧げたいと思えるような、自分の才を余すところなく発揮でき、使ってくれる主に仕えたい』

 そうしてじっくりと、彼女は時を待った。若くして周りが誰も追い縋れない彼女は、ただ待っていた。大陸を纏める者達の政策も、黒い話も、幾重にも耳に入れながら。
 そうするうちに、彼女は不満を抱いて行った。何故、この程度で満足しているのか。奴等の首の上に乗っているのは出来の悪い帽子掛けに過ぎない、と。
 驕っていたのかもしれない。否、驕っていたのだろう。自分よりも上は居ないのでは無いか……そんな心も僅かに出てくる程に。
 大陸全土より学びたくて来ている者達ですら追いつけず、上に立つ立場の人間たちは保身と汚職にて私腹を肥やすばかり……言い寄ってくる輩は居ても彼女の眼鏡には敵わず、彼女はついに都
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