繋いだ手は一つ、繋ぎたい手も一つ
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なら取り合おうともしない自分が居たはずだと思い出して、桂花はまた、悔しげに眉を寄せた。
誰かと言い争えるのは充足感がある。人をやり込めるのは優越感がある。この子と高め合いながら勝てるなら、より大きな快感が得られる。
欲しい、と思った。利用し合う関係であろうと隣に並んでくれる人が、桂花はただ欲しくなった。彼女の事は実力的に見ても認めているのだから、友達、という関係は吝かでは無かった。
「……桂花よ。か、勘違いしないで。私は寂しくなんて無いんだから! ゆ、ゆ……夕、が頼んでくるから、仕方なく一緒に寝てあげるだけよ!」
彼女の真名を呼ぶ。気恥ずかしかったが、どこかそれは、心地いい暖かさを心に灯した。
初めてである。親以外に真名を呼ばれた事の無い彼女が、他人に真名を呼ぶことを許したのは。
「ん、ありがと。桂花は可愛いね」
「ふん……バカ。どうせそうやって私を籠絡するつもりなんでしょ」
「ふふ、そうかもしれないし、そうじゃないかもしれない。桂花も軍師志望なら、自分で考えて出した答えを信じるべき」
「……見てなさいよ。絶対に私の方が上だって、思い知らせてやるんだから」
ぎゅうと抱きつかれた事よりも、真名を呼んで貰えた事が、何よりも心に温かさを増やした。
口では言い返しながら、これほどに気持ちいいモノなのかと、桂花は初めての友人を得た事で喜びを感じていた。
†
「――――って感じの出会いだったわ。あの子達とは」
「……」
思い出話を聞いて思考に潜る雛里の瞳は冷たい。何かを読み解こうとしているのは明らか。自分でもその時の事を思い出して良かったと今なら感じる。
彼女があの時、どうして自分を取り込もうとしなかったのかが、やっと理解出来た。
「田豊さんは――――」
「待って。私に言わせて。あの子がどうして私を袁家に引き入れようとしなかったか、でしょ? 権力をもってすれば私を守る事も容易く、且授に引き合わせればよりうまく事が運べたはずだもの」
途中で言葉を区切ると、雛里は私にコクリと頷いた。
彼女は私の話を聞いただけで夕の考えが分かったのだ。それはまさしく異なこと。でも、この状態になったからこそ読み取れる。
一番恐ろしいのは……夕だ。心に湧いた恐怖は抑えられない。あの子は最初の言葉の通りに、私を最大限に利用していた。
慄きそうになる唇をどうにか正常に保った。
「最初っからあの子は袁家を潰すつもりでいたみたいね。私は華琳様との懸け橋で、袁家崩壊後の居場所の確保要因。外部に“よりよい環境を整えさせる”為に私は利用されてた。袁家が滅べば且授も自由になれるから、その為だけにあの子は内部に居続けた。且授を華琳様に仕えさせる状況を作ってたのね」
主
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