繋いだ手は一つ、繋ぎたい手も一つ
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ると評価しているけど」
「このっ……私の事、遠回しに性格が悪いって言ってるようなものでしょ! それ!」
「……にやり」
「口で言うな口でっ! あーもう! あんたと話してると調子狂っちゃう!」
次々と被せられて、桂花は自分のペースを乱しに乱された。声を抑えながら怒鳴る、という器用な事をして息を荒げさせていた。
ふと、そんな些細な言い合いを久しくしていなかった彼女は、自分の変化に気付く。
――なんで私、こいつと子供みたいな言い合いしてるのよ。
そして、桂花が止まったその隙を見逃す夕では……無い。
「どう? こうやって相手を巻き込んで場の流れを支配するのも楽しいモノ。負けず嫌いの荀文若。私を巻き込んで全てを手に入れたらいい。利用し、利用し合うのが世の常。私に巻き込まれるのなら、あなたはその程度ということ」
口を開いて言い返しかけた。されども桂花は言葉を全て飲み込んだ。また、彼女に負けたのだ。
分かっている。これは挑発だ。自分の心に発破をかけて誘導している。斜に構えて跳ね除ける事は出来るが……それでは逃げと同じだった。
自尊心が強い彼女は負けたくない、という悔しさを抑えようがない。だから桂花は……
「ふん、あんたの全てを私が利用してやるから……見てなさいよ」
ぶしつけに言い放った。誘いに乗ってやる、あくまで自分が利用する側だ、と反抗を示して。
目の前でふっと息を付いた夕。桂花はまた、彼女に驚愕させられる事になった。
「ありがと。これであなたと私は友達」
こんなモノのどこが友達だ、と思ったが……無表情な夕がヒマワリのような笑顔を始めてみせた事で、桂花はそれに見入ってしまった。
――こいつ、こんな顔で笑えるんだ。
すっと夕は寝台の隣に腰掛けてきた。何故の行動か分からず首を傾げる。
「私のことは夕でいい。一緒に、寝よ? 明がいないから一人で寝るのは寂しい」
甘えて身体を寄せられ、ほんの少し自分の方が高いから上目使いを向けられる。
ドクン、と心臓が跳ね上がった。よくよく見れば可愛い美少女。透き通った白い肌、艶やかな黒髪、吸い込まれそうな闇色の瞳。
桂花は誰かと寝た事などない。いつも一人で夜を過ごしてきた。別に必要ない事であったのだから当然。
これは罠だ、自分を籠絡しようとしているのだ、先程も女同士で絡もうとしていたではないか……言い聞かせても、うるうると懇願してくる小動物の視線に弾む心は抑えられない。
友達、というモノがどういった関係なのかは……桂花は知識として知っているだけ。
その弁舌の達者さから、口の悪さから、高圧的な態度から、彼女と友達になってくれるモノなど、誰一人として居なかった。
先程の言い合いを思い出せば、腹は立っていたが普段
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