繋いだ手は一つ、繋ぎたい手も一つ
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うかと。洗い直しも必要だと思いますので」
全部を言ってない、と桂花は思った。思考の仕方、方向性、何を望んでいるか、ある程度話したのにまだ求めるのは少し引っかかりがある。
――それはきっと黒麒麟の為なんでしょ? ほら、また瞳が冷たく凍ってるもの。
こちらをじーっと見つめる瞳には知性の輝き。しかしながら、普段とは全く違う感情が宿っていた。多分それは、嫉妬。
「……黒麒麟と夕達になんの関係があるの?」
教えてくれるかは分からなかったが言い当てて問うてみる。雛里は一寸眉を寄せた後に、桂花にとっては一番有り得ない事実を聞かせた。
「田豊さんは、いえ、きっと張コウさんも……彼と真名を交換してましたから」
「はぁ!? あの夕と明が!? 有り得ないわ! 絶対無い! そんなわけ――」
「でもっ! 虎牢関では既に交換してたらしいんです! 洛陽でも彼を引き抜こうとしましたし、田豊さんだけは間違いありません」
嘘だ。そんなわけない、と繰り返しても事実は変わらない。本来なら真名をすぐに交換するような二人でも無い。
人心掌握の仕方、挑発、先読みの思考、人の心の機微に聡い所……黒麒麟の情報を並べてみると、ある意味で二人に似てると感じた。
されども、やはり違う。
自分達だけが大切で、依存し合ってどうにか生きていた夕と明
自分以外が大切で、他者との線引きを行い内側だけで崩壊に向かおうとする黒麒麟
そこが違った。違いを理解した瞬間、納得がいった。
――ああ、そうか。あの二人は似たモノに引きつけられて、自分達に無いモノを無意識的に補おうとしたのか。
その程度で真名を交換するか、と言われれば否であるが、彼女達は別。既存の価値観では測れない。
「……夕が許してるなら明も交換してるわね。あの子達と黒麒麟は似てる。夕と明は人の心を見抜くし、他人と違うあの子達は同類っていう安心感を得て、無意識の内に自己の変革を望んだに違いないわ」
やっぱり、というように雛里はまた口を尖らせた。
不思議だった。情報では夕が雛里と対面したのは一回、それも短い時間。シ水関での作戦会議の時だけ。だというのに何故、ここまで固執して嫉妬の炎を燃やすのか。
思考を回す桂花に、雛里はこのままでは教えてくれないと思ったのか、意を決したように口を開いた。
「田豊さんは……彼の隣に立てる人です。彼は求められるとあまり拒みません。自己に対しての評価や拘りが薄く、記憶を失っていては尚、染められてしまいます。次の戦で私達の軍に入れるおつもりですから、不可測への対応も考えておきたいんです」
単純に隣が取られるのが嫌かと思えばそうでは無いらしく、最悪の事態を想定してのこと。
染められ、内部での毒がより強固になる可能
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