暁 〜小説投稿サイト〜
優しく抱いて
第三章
[2/2]

[8]前話 [9] 最初 [2]次話
めずそのまま続けてはいた。それでも言葉は違っていたのだ。
「とにかくよ。心よ」
「まずは心なんだ」
「それが一杯なら」
 そしてまた言うのだった。
「お金なんていらないわ。かえって邪魔かしらね」
「邪魔って」
「だから。心さえあれば本当にいらないのよ」
 このことを念押しさえしたのだった。随分と真面目な面持ちにさえなっている。
「それ、覚えておくことね」
「心さえあればなんだ」
「逆に言えばよ」
 今度はこんなふうに言葉を変えてきた。
「幾らお金があっても心がなかったら何の意味もないわ」
「何も」
「そう、何もね」
 こうも言い加えてきた。その間悠樹はテーブルの席に座ってじっと話を聞いていた。彼はただ話を聞いて頷くだけだった。
「意味ないわよ。女の子はね」
「女の子は?」
「見てるわよ」
「見てるんだ」
「そうよ。何でもね」
 言葉が鋭いものになってきていた。ビールを飲みながらもだ。
「見てるわよ。若し心がなかったら」
「どうなるの?」
「終わりよ」
 一言で言い捨てたのだった。
「それでね。何もかも終わりなのよ」
「終わりなんだ」
「そう、何もかも終わりよ」
 また言う奈々だった。

[8]前話 [9] 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ