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優しく抱いて
第一章
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第一章

                     優しく抱いて
「もうすぐ誕生日だよね」
「ええ」
 加賀美真夜は加藤悠樹の言葉に応えていた。
「そうね。これで十六回目の誕生日」
「早いよね」
 悠樹はこう言って真夜の顔を見て笑う。その顔は女子高生、それも一年生にしては大人びていて中性的で女の子を思わせる顔の悠樹とは実に対称的である。真夜は背も高く男の子としては普通位の悠樹と比べても遜色ない程だ。セーラー服も何処か大人が着ているようである。
「気付けばもう十六なんてね」
「そうね」
 真夜は大人びた声で彼に応えた。
「それで私達が付き合うようになって」
「一回目の記念日だよね」
「あの時は驚いたわ」
 黒に少しだけ茶を混ぜたロングヘアの中で微笑んで笑う真夜だった。
「いきなり告白してきたから」
「あの時は勇気を奮ったんだよ」
 悠樹は微笑んで彼女に述べた。微笑むその顔は童顔でもあり小さい女の子を思わせる邪気のないものだ。少し伸ばした茶色の髪が奇麗である。
「もうどうなってもいいって思ってね」
「大袈裟ね」
 その声も大人びたものだった。
「それって」
「本当に必死だったんだよ」
 彼は言うのだった。
「死んでもいい、行ってやるって思ってね」
「そこまで思っていたの」
「本気でさ」
 二人は今川の土手のところにいる。土手は草原になっていてそこに制服姿で並んで座っている。悠樹の制服は詰襟でありそれだけ見れば確かに男だとわかる。
「振られたらこの川に飛び込んで死ぬつもりだったんだよ」
「私が悠樹君を振ったら?」
「うん」
 また答えたのだった。
「その時はね」
「飛び込まなくてよかったわね」
 真夜は彼の今の言葉を聞いて本当にそう思ったのだった。
「飛び込んでいたらそれこそ大変なことになっていたわよ」
「だから死ぬつもりだったんだ」
 このことがまた言葉に出る。
「本気でね」
「けれどそうはならなかったね」
「真夜さんが告白受けてくれたからね」
「断る筈ないわ」
 真夜は言った。
「それはね。絶対になかったわ」
「何で?」
「好きだったからよ」
 真夜は川を見ていた。二人並んでその土手の前にある川を見ながら話していた。真夜の目は何処かこの世界ではないものを見ているかのようだった。
「だから。断らなかったのよ」
「僕が好きだったから」
「今だから言えるけれど」
 その琥珀色で何処か別の世界を見ているような目でまた彼に語る。
「好きだったの。告白されて嬉しかったわ」
「そうだったんだ」
「とてもね。だからこうして同じ高校にも行って」
「うん」
「今もこうしてここにいるの」
 こう彼に話すのだった。
「そういうことなのよ」
「成績が同じ位でよかったよ
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