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屠殺場
第三章
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「我々もユダヤ人達を殺しているが」
「あれだけのことは」
「とてもですね」
「出来ません」
「あそこまでは」
「そうだ、あの中にはだ」
 将校はさらに言った。
「子供の死体もあったな」
「五歳位ですね」
「それも女の子の」
「仔牛の肉ならよかったのですが」
「まだ小さいというのに」
「奴等から目を離すな」
 将校は兵士達に告げた。
「軍団からな」
「はい、放っておくと何をするかわかりません」
「連中は度が過ぎています」
「その残虐さが我々に向けられるかも知れませんし」
「注意しておきましょう」
 現場は蒼白であった、そしてだった。
 戦場でもだ、ルーマニア軍はドイツの同盟国であったが占領地でユダヤ人達を片っ端から捕らえてだ、そうしてだった。
 収容所の中で虐殺していった、それを聞いてだ。
 ドイツ軍の者達は実際に収容所に行きその虐殺を見てだ、やはり蒼白になり背筋を凍らせ吐く者すら出して言うのだった。
「これはあんまりだぞ」
「酷過ぎる」
「ここまでするのか、奴等」
「一体何なんだ」
「ここまでユダヤ人達が憎いのか」
 生きたまま惨殺された骸達を見ての言葉だ。
「連中はあくまか」
「ブラド四世を生んだ国だが」
 串刺し公だ、それで彼等も連想したのだ。
「しかしな」
「ここまでするのか」
「奴等の残虐さが我々にも向けられれば」
「そうも思うとな」
「しかも法律も何もない」
「無道を極めているぞ」
 それ故にと話す彼等だった、そしてこのことはまたヒトラーの耳に入りだ。
 ゲッペルスにだ、この時も言った。
「また政府に言うが。しかし」
「しかしですね」
「彼等は法律を知らないのか」
 ワイマール憲法を停止させ全権委任法を通させた人間の言葉だ。
「ルーマニア人は」
「知っていても無視しているのではないでしょうか」
 これがゲッペルスの見方だ、彼等への。
「それよりもです」
「ユダヤ人達への偏見の方がだな」
「強いのではないでしょうか」
「それではだ」
「はい、彼等への注意ですね」
「合法的にやってもらいたい」
 そのユダヤ人政策をというのだ。
「そうしてな」
「彼等を止めますね」
「そうしよう」
 ヒトラーはルーマニアのそのあまりにも残虐なユダヤ人政策を何度も止めた、それは彼にしても看過出来ないレベルだったからだ。ルーマニアの行いはそこまで酷かった。
 そしてだ、それはルーマニアだけではなくだ。
 リトアニアでだ、日本の外交官がだ。領事館に戻ってすぐに領事である杉原千畝に対して彼が見たことを報告した。
「外は恐ろしいことになっています」
「ソ連に併合されたことによる恐慌ではありませんね」
「はい、リトアニア人達がです」
 他ならぬ彼等がというの
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