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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
X・Y・Z
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ーエングラム伯と繋がりが深い。伯は頼りにするのではないかな」

繋がりが有るのはワーレンも同様だ。俺とファーレンハイトの会話を憂鬱そうな表情で聞いている。そしてケスラー……、ケスラーとローエングラム伯は例の指揮権の一件以来関係は疎遠だ。彼がこの危機に気付いているなら内心ではホッとしているかもしれない。

「といって簡単に味方するとも思えん。あの二人は司令長官とも関係は悪くない」
「うむ、厳しい選択を迫られるかもしれん。今一番神経を尖らせているのはあの二人だろうな」
ファーレンハイト、ワーレンの会話を聞きながら思った。たとえローエングラム伯が別働隊の指揮官に任じられても危機は続く。指揮下に配属された人間は心理的な緊張を常に強いられる事になる。思わず溜息が出た。

「如何したのだ、ルッツ提督」
「いや、ローエングラム伯が別働隊を指揮する事になってもその配下にはなりたくないと思ったのだ。戦闘よりもそれ以外の事で神経を使いそうだ」
俺がファーレンハイトに答えると今度はファーレンハイトとワーレンが溜息を吐いた……。



帝国暦 487年10月 6日   オーディン  ゼーアドラー(海鷲)  コルネリアス・ルッツ



「まあこうなると思ったんだ、五人選べと言われた時からな」
ミッターマイヤーがぼやくと他の四人が同意の声を上げた。ロイエンタール、ワーレン、ミュラー、そして俺。ローエングラム伯より別働隊の指揮官に選ばれたメンバーだ。誰が音頭を取ったわけでは無いが気が付けば皆でここに来ていた。

皆、憂鬱そうな表情をしている。実際憂鬱だろう、テーブルはまるで葬儀の席のようだった。そのくせ皆、グラスを空けるペースは速かった。俺もX・Y・Zをもう五杯飲んでいる。何時もはX・Y・Zなど飲まないのだが今日はどうにもこれが飲みたかった。

「物は考えようさ。辺境星域の制圧、反乱軍の抑え、暇を持て余す事は無い筈だ。武勲を上げる機会は多いだろう」
「ロイエンタール提督、俺はそんな事より安心して戦いたいよ」
ロイエンタールとワーレンの遣り取りに皆が溜息を吐いた。ここまで疎ましい任務も無いだろう。

「まあ余り心配はいらんさ、ローエングラム伯は別働隊の指揮官に任じられたんだ。司令長官はローエングラム伯を信じている、そうだろう?」
暗に今すぐにローエングラム伯が排除されることは無い、そう言うと皆が頷いた。いや、ミュラーだけが頷いていない。深刻な表情をしている。

「どうかしたか、ミュラー提督」
声をかけるとミュラーが太い息を吐いて“怒っていますよ”と言った。
「怒っている?」
ロイエンタールの問い掛けにミュラーが頷いた。そして“これです”と言って右手で左腕を叩き始めた。

ミュラーの仕草に皆が顔を見合わせた。
「ミュラー
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