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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
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とワーレンが顔を曇らせている。確かに厄介な事になったと俺も思う。一つ間違うと軍内部に亀裂が入りかねない。
昨日、ブラウンシュバイク公爵邸で親睦パーティが開かれた。俺、ファーレンハイト、ワーレンは参加していない。万一の時のために宇宙艦隊司令部に待機していた。パーティに出席したのはヴァレンシュタイン司令長官、ローエングラム伯、メックリンガー提督、アイゼナッハ提督、ロイエンタール提督、ミッターマイヤー提督、ビッテンフェルト提督、ミュラー提督。
パーティでは貴族達は露骨にローエングラム伯を贔屓にし他のメンバーを無視した。同じ貴族としてローエングラム伯爵家の当主を歓待したともいえるが元々は成り上がり、小僧と蔑視していたのだ。ローエングラム伯が軍内部で孤立しがちな事、現状に不満を持っているであろうことを察して軍内部に楔を打ち込もうとした、そんなところだろう。
「まあ今回は司令長官が上手く捌いたが」
「しかししこりは残った、皆が不安に思っている」
俺もワーレンもファーレンハイトの言葉に頷かざるを得ない。確かにしこりは残った。皆がローエングラム伯の去就に不安を感じている。ワーレンがクイッとグラスを空けた。ボトルはもう残り少なくなっている。ワーレンのグラスにワインを注ぎもう一本ワインを頼んだ。
「能力は有るのだがな」
ワーレンが呟くように言った。確かにその通りだ、ローエングラム伯の能力に疑問は無い。しかしそれだけに始末が悪い。いっそ能力が無ければ貴族達を笑い飛ばせただろう。人を見る目が無いと。
「司令長官は如何御考えかな?」
俺が問い掛けるとファーレンハイト、ワーレンの二人が俺に視線を向けてきた。
「分からんな。俺は今日司令長官に決裁を頂いたのだが特に変わったところは無かった」
「気にしていない、そういう事かな。ローエングラム伯を信じている……」
ファーレンハイトと俺の遣り取りにワーレンが“いや、それは無いと思う”と言った。眉を寄せている、ワーレンは何かを考えている。
「未だ将官になる前、佐官時代の頃だが司令長官の下に就いた事が有る。あの頃から司令長官は周囲に心の内を読ませる事は滅多になかった。部下達は皆司令長官の心の内を慮ってピリピリしていたよ、俺も含めてね」
ワーレンが微かに笑みを浮かべた。不思議な笑みだ、自嘲だろうか。
ワーレンが口にしているのは巡察部隊の事だろう。トラウンシュタイン産のバッファローの密猟、密輸事件を司令長官が暴いた。ワーレンは副長として司令長官を補佐する立場に有ったと聞いている。不思議なのはワーレンはその当時の事を話したがらない事だ。皆に訊かれても言を左右にして話そうとはしない。そしてその事件に関わったケスラーも話したがらない。どうやらあの事件は単純な密猟、密輸事件では無かったのではないかと皆が
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