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外伝 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
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帝国暦 487年10月 5日 オーディン ゼーアドラー(海鷲) コルネリアス・ルッツ
「とうとう仕掛けてきたな」
「いや以前から仕掛けてきているよ、ワーレン提督。一週間ほど前の事だが妙な噂が流れただろう、覚えていないか?」
ファーレンハイトが意味有り気にワーレンを見てそして俺を見た。思い当たる事は有る。
「ブラウンシュバイク公の所の人間がローエングラム伯の参謀に接触したというあれか」
俺が答えるとファーレンハイトが頷いた。
「このゼーアドラー(海鷲)で接触したらしいな。それを考えると落ち着いて酒を飲むことも出来ん」
不愉快そうに言うとファーレンハイトがワインを飲んだ。確かにそうだ、最近では誰もが周囲を窺うようにしている。それはこのゼーアドラー(海鷲)でも同じだ。今も俺達の他にも客が居るが多くが深刻そうな表情をしている。何処か空気が重苦しい、寛げないのだ。
カラになったファーレンハイトのグラスにワインを注いだ。トクトクと軽やかな音を立てて透明な液体がグラスに流れる。それを見ながらファーレンハイトがつまみに手を伸ばした。クラッカーの上にチーズが乗っている物だ。ファーレンハイトはフレッシュチーズが乗っているクラッカーを選んだ。
「パウル・フォン・オーベルシュタイン准将だったな。切れるようだがどうにも薄気味悪い男だ。見ていて楽しい男ではないな」
「ケスラー提督とは士官学校で同期生だったと聞いた。自らローエングラム伯の幕僚になりたいと押しかけたらしい」
ファーレンハイトとワーレンはオーベルシュタインに関心が有るようだ。まあ俺もそれなりに奴には関心が有る。何故奴は司令長官の所に来なかったのか、何故ローエングラム伯を選んだのか、そして人材招聘に貪欲と言ってよい司令長官は何故あの男を旗下に招かなかったか……。奇妙な男だ、何かが他の人間と違うような気がする。一口ワインを飲んだ。上物の筈だが口中に苦みを感じた。今一つ美味しいと思えない。クラッカーを口に運んだ、乗っていたのはブルーチーズだ、これは美味い。
「接触したのはアントン・フェルナー准将。こいつも一筋縄ではいかない男の様だ。ミュラー提督とは士官学校で同期生らしいな」
「では司令長官とも?」
「親友らしい」
ファーレンハイトの言葉に思わず息を吐いた。ワーレンは何とも言えないような複雑な表情をしている。親しい間柄でも敵味方に分かれる、内乱というのはそういうものだと理解していたが現実になるとは……。俺もワーレンと同じような表情をしているのかもしれない。
「それにしてもブラウンシュバイク公が自分の娘を道具に使うとはな、話を聞いた時は驚いたよ」
「それだけ相手も必死、追い込まれているという事だろう。厄介な事だ、油断は出来ん」
ファーレンハイト
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