群雄割拠の章
第2話 「だから対価を……払わなければならないの」
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いた。
「では本当に、今までの記憶がないんだな?」
「ん……ああ。名前も、場所も、親も……『兄弟がいたことも』覚えていない」
「なんと……実の兄弟のことまでか」
あれだけ心配していた兄君のことまでも……
「覚えているのは……目が覚めたら谷底で寝ていたことだけだ。何故かわからないけど、生きる術を、サバイバル技術を覚えていた。ともかく人里に出て、大きな街があるというから東に向かっていたんだ」
「そしてあの農邑に立ち寄り、略奪しようとしていた黄巾を見つけたと? たった一人で勝てると……よく思えたなあ」
「今にして思えば。不思議なんだがな。何故かあの大人数を倒す方法がわかったんだ。この……」
と、盾二が右腕に力を込めると、その腕の筋肉が膨れ上がる。
そしてその掌に、赤い火が灯る。
「何故かわからないけど、大きな火炎と……巨大な竜巻、それに氷の鎧みたいなものが使える、と。何故そう思ったのかはわからない。でも、その賊に子供が殺されそうになったら無我夢中で……」
「ふむ。まあ、確かに。盾二の天の御業なら可能だな」
まだ盾二が、桃香たちと一緒に私の客将をしていた頃、たった一人で千以上を倒した技。
その力があれば……
「でも、何故俺はこんな力が使えるんだろう……?」
「そりゃ、お前が天の御遣いだからだろ?」
「天の御遣い……ねぇ。厨ニ臭い話だけど、俺は選ばれた勇者かっての」
「は?」
盾二は、自嘲するように何かを呟く。
「ただ力があるのは……何故か分かる。この時代のことも……何故か知っている。若干、記憶と違うけど」
盾二の記憶では『黄巾や連合の詳細が違う』ということらしい。
黄巾はともかく連合では董卓は極悪人で、しかも董卓は呂布に殺されるらしい。
そして私や劉虞は連合に参加せず、その後仲違いをして人々に慕われた劉虞を、私が殺すのだそうだ。
……劉虞が慕われていた?
平原の人々に蛇蝎のように嫌われている、あの劉虞が?
「それに、梁州というのは三国時代になかったはずだ。しかも、劉備がそこの州牧って……」
「いやいやいや。それを成したのはお前だろ?」
「俺が? そんなことを?」
そう言って口元を抑え、考えこむ盾二。
どうやら本当に覚えていないらしい。
それにしても盾二は……記憶を失う前の盾二は、今の盾二が知る『歴史』を知っていたのだろうか?
これほどまで『今』の盾二が悩む、その歴史を変えたというなら……何故それを変えようと思ったのだろうか?
「……はあ。まあ、ともかく覚えていないんだから、考えてもしょうがないか?」
「わ、割り切るの早いな……まあいいけど」
う、うん?
盾二なら、もっと思慮深く考える方だと
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