群雄割拠の章
第2話 「だから対価を……払わなければならないの」
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居は竪穴式に土壁形式だし、どう見ても中国の家屋もあったし……おまけに文化基準からしてもせいぜい二〜三世紀じゃないかと思うんだが」
「……申し訳ありません。天の言葉でおっしゃられても、わかりかねます」
騎兵の言葉は当然だった。
太守や一部の武将ならともかく、一介の騎兵程度の知識では自国の太守こそが世界の全てだ。
他は全て敵、と言っていいほどの知識しか持たないのが大半だった。
「そうかあ……農家の人よりはわかるかと思ったんだけどな。じゃあ、この辺の行政区、いや、この時代だと都か? そこの一番偉い人の名前は?」
「えと、ここは冀州で、大きな街といいますと徳州の近くです。太守は……そちらにおられる公孫賛伯珪様ですが」
「ふむふむ、冀州……中国の冀州市? いや……時代からして明代まであった冀州か? ということは……って、公孫賛? 公孫?でなく?」
「……その言葉、御遣い様が以前伯珪様に聞いておられていたような記憶があります」
「あ、そう? うーん、そうかぁ」
黒ずくめの男にして天の御遣いと呼ばれる男、北郷盾二は悩ましげに腕を組む。
「さてどういうことか……タイムスリップ? いや……いや、なんでそう思うんだ? この時代が過去で、この時代の先を知っている……でも、俺はここにいて……」
ぶつぶつと呟く男の背後に、ゆらりと動く影。
そして、男の背後からがしっと肩を掴まれた。
「いっ!?」
「じゅんじぃいいいっ! お前は盾二なんだよおおおおお! 私の真名も忘れたのかあああああああ!?」
「ま、まな?」
「あああああああああああああっ! やっぱり忘れられているううううううううううっ!」
「は、伯珪様! お気を確かに!?」
不意を打たれ、錯乱する公孫賛に頭を抱えられ、その胸に抱きかかえられたまま揺さぶられる盾二。
その胸はなめした硬い革鎧に包まれているものの、女性のふっくらとした曲線と腕の柔らかさ、そしてその匂いに思わず盾二は慌てた。
「ちょ、ま!? あ、あたってる、あたってるから!?」
「私を忘れるのはいい! 悔しいけど……よくあることだからああ! けど、桃香や愛紗、鈴々のこと忘れるやつがあるかああああああ!?」
「と、とうか? つっ!? 頭痛が……だ、誰?」
「ああああああああああああああっ!」
際限なく錯乱する公孫賛。
それを見た周囲が、慌てふためいて止めようとする。
その様子を見ながら、助けられたはずの農邑の人々は――
『この太守様、ほんとうに大丈夫か?』
と、互いに顔を見合わせるのだった――
―― 公孫賛 side 平原 ――
盾二と出会ってから二日後。
私と三千の騎兵は、盾二と共に、平原へと戻って
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