群雄割拠の章
第2話 「だから対価を……払わなければならないの」
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るほど、その存在感の無さが『唯一の』欠点だとこの騎兵は思っていた。
それさえなければ、人望もそれなりにあり能力もそれなりにある、頼りがいもそれなりの上司であると思っている。
とはいえ、この騎兵のそうした感想も、他人から見ればある意味『ひどい』ものなのだが。
「連合から一年経ったとはいえ、さすがに御遣い様に忘れられたとなれば……まあ、仕方ないかと」
「へー……で、その御遣い様って?」
「は?」
「え?」
騎兵は、思わず黒ずくめの男を見る。
目の前にいる黒ずくめの男――天の御遣いである北郷盾二も、騎兵を見て首を傾げた。
「あの、御遣い様?」
「……もしかして、俺のこと?」
「えっと……」
確かに目の前にいる北郷盾二という男は、自身を天の御遣いだと言われることを嫌がっていたと騎兵は思い出す。
だが、それでもこういう場面で露骨にそれを態度で表す人だっただろうか……?
「御遣い様。北郷、盾二様では……ないので?」
「ほんごう……じゅんじ? それが俺なの?」
「は?」
「え?」
……互いの理解に、齟齬が見られた。
「ええと。で、では、貴方の名前は?」
「……覚えてない」
「は?」
「だから……覚えてないんだよ。記憶喪失ってやつ?」
「はい?」
騎兵は、思わず周囲の仲間を振り返る。
その仲間たちも意味を図りかねていた。
「きおく……そうしつとは、どういうものでしょう?」
「うーん……つまり、だな。俺はどこの誰で、どんな過去だったかわからん。気が付いたらここからずっと西の山奥の谷で倒れていた。その前後は何も覚えてない」
「……は?」
「なにぃーっ!?」
騎兵が唖然とした時、唐突に大声で叫ぶ声がする。
先程まで、拗ねていじけていた公孫賛だった。
「じゅ、じゅじゅじゅじゅじゅじゅんじぃっ!? おま、き、記憶が無いって、どういうことだ!?」
「いや、どういうことと言われても……言った通り、なんも覚えてないってことで」
「……私の事、覚えていないって、そういうこと……か?」
「ええと……俺は、あなたとお知り合いで?」
「がぁぁぁぁぁぁぁぁぁん…………」
スローモーションで、三回転半しながら倒れこむ公孫賛。
見ていた騎兵から『器用な……』と場違いな感想が飛ぶ。
「……何も覚えておられないので?」
ショックを受けている公孫賛を尻目に、騎兵が尋ねる。
「ああ。もう十日程かな? 気がついたら谷間で倒れていて、自分のことが全くわからないんだ。ここがどこかもわからない」
「なんと……」
「で、とりあえず道中の人に知っている言葉で色々話しかけた。日本語で通じるから日本かと思ったら、どうも俺の知る日本じゃないようだしさ。住
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