群雄割拠の章
第2話 「だから対価を……払わなければならないの」
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…」
冥琳は、葛藤するように頭を抱えているわ。
気持は痛いほどわかる。
だってシャオは……わたしの愛する妹なのだから。
「……人質ならば、天の御遣いでなくてもよかろう。劉備に人質として、いずれ返還してもらう約定で預けることも」
「あの子が? 人質を受け取るわけないじゃない」
「……………………」
「けど、盾二は違うわ。きっと、この人質の意味がわかる。だからこそ受け入れる。嫁ぐかどうかは……盾二なら断るわね。わたしなら押し掛けるケド」
「……笑えんな」
あら?
わたしは本気よ?
「………………いや………………だが……………………ぬう………………」
冥琳は、感情と理屈の狭間で葛藤する。
わたしはその答えを待つ。
「…………悔しいが、確かに有効な手だ。あの御遣いならば、確実に味方に引き込める。そして劉備は、その御遣いに絶対の信頼がある。ならば……」
「ふふっ。でも、嫁ぐとなると……あの劉備ちゃんがどう反応するか、見ものではあるわね」
「しかし……お前は、本当にそれでいいのか?」
「………………」
シャオが、もし盾二に惚れるなら……
それを盾二が受け入れるなら……
まだ……まだ諦めることが、できる。
「……わたしは、孫呉の王よ。だから……いいのよ」
「そう、か………………」
そう。
まだ……諦められる。
この時は、そう……本気でそう思っていたのよ。
翌日、あの噂が届くまでは――
―― other side 冀州 徳州近郊 ――
「いーんだ、いいんだ……どうせ私なんかそんなもんなんだ……所詮、私は名前も覚えてもらえないんだ……連合の後、盧植先生に会いに行っても『あんた誰?』って言われるしさ……そうだよ、盧植塾でも言われたさ、ああそうさ……他の塾生にも顔も名前も覚えてもらえなかったしさ……登用しに行ったら『知らない人の元で働けません』とか言われたさ……中には訪ねたのに、いることさえ気付かれなかったさ……ふふふ、いーんだ、いーんだ……どうせ私は平々凡々の普通の人なんだ……」
一人いじけ、拗ね、地面に自分の名前を延々と書く奮武将軍にして薊侯、公孫賛伯珪の姿があった。
その姿は実に哀愁漂い、子供に指差されそうな姿ではあったが。
「……なあ、なんであの人、名前聞いただけで落ち込んでいるんだ?」
「いや……あの……まあ、よくあることですけど……今回は流石に」
北平から付き添ってきた騎兵の一人は、さすがに公孫賛を哀れに思いつつ、さもありなんと溜息を吐いた。
実によくあること故に、である。
この公孫賛という人物は、普通すぎて平々凡々。
時としてその存在が大多数に埋もれがちにな
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