全ての予兆
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俺とセイバーがここに来て数時間が経過した。
「ところでマスター、対戦相手について連絡は来たか?」
静寂に包まれた空間でセイバーが椅子に腰つけたまま俺に話しかけた。いきなりの事で少し驚きはしたが俺はポケットから携帯端末機を取り出し、確認する。
「いや、今んとこないな」
対戦相手の発表は廊下の掲示板で提示され、それを知らせる為に携帯端末機に連絡が来るはずなのだが…今はないようだ。
「……変だな」
ふとセイバーが呟いた。
「え、何が?」
「いつまで経っても連絡が来ない事がだ」
セイバーは表情を曇らせながら言う。俺にとっては別に気にするような事ではないのだがセイバーからすると何かあると思ったのかもしれない。セイバーは席から立ち上がる。
「マスター、言峰神父に次の対戦相手の事を訊いてほしい」
「別に構わないけど…」
本当の事を言うと言峰神父はあまり好かなかった。ねっとりと纏わり付くようなあの雰囲気がどうにも合わない。不安に襲われながらも、俺は渋々扉を開け、一階にいるであろう言峰神父の元へと向かった。
一階に降りてみると、人集りができていた。なんだろう?と思い、人集りの中を割っていくと、衝撃の光景が広がっていた。廊下は何か大きな鉄球でも落としたかのような穴がいくつも空き、壁には亀裂が走り、今にも崩れてしまいそうだった。
「これは…」
『サーヴァントだろう。この惨状がなによりの証拠だ』
霊体化したセイバーが側から声をかけた。確かにこの現状から察するにサーヴァントの仕業だ。しかし、原因となったサーヴァントがどこにも見当たらない。
「おい聞いたか?さっきの騒ぎのこと」
「ああ、聞いた。サーヴァント同士が戦っている時に一人のマスターとサーヴァントが乱入して一瞬で二体のサーヴァントを潰したんだろ?」
「ああ、相当ヤバイらしいぜ。噂では二体のサーヴァントを潰したサーヴァントが使っていた武器は見えないって聞いたぞ!」
「マジかよ」
そんな会話が野次馬の中から聞こえてきた。その瞬間、とてつもなく不安に襲われた。話から察するにこの場を収めたマスターとサーヴァントはとてつもなく強い。とても俺なんかじゃ太刀打ちできない程に。もし、一回戦から当たると考えたら、恐怖せずにはいられなかった。
決してセイバーを弱いと言っている訳ではない。ただ、俺がセイバーの足を引っ張り、負ける。そんな光景が脳に浮かぶのだ。
『マスター、恐怖しているのか?』
「ッ!?」
セイバーの一言に図星を突かれた。全くもって自分が情けないと思う俺。これではマスター失格だ。セイバーに色々と責め立てられると覚悟する俺だったが彼女から出たのは罵声の言葉ではなかった。
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