強いられた変化
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設計図、というモノは技術者でなければ把握出来ないモノが大抵である。
言わずもがな、細かい部品の名前や専門的な単語など、畑が一つ違えば分からない事が多々であろう。
ただし、それはあらゆる方面に技術が発展した現代の話。秋斗が落とされた三国志に良く似たこの世界の文明はそこまで進んでいない。現代でのそこそこの学力さえあれば、なんとなく分かるモノが多数であった。彼にはある程度この世界を生き抜く為の常識的な知識が与えられているのもあったが。
じっと、一つの設計図に目を通している秋斗は、隣でゴクリと生唾を呑んで見つめる少女――――真桜の視線に少しばかりの緊張を感じる。
次いで、彼女が手に乗せているモノを見やった。それはミニチュアの投石器。設計図の完成品を小型化したモノであった。実物は大きすぎる事と、次の戦の秘密兵器である事、そして次の戦場にある程度準備してある為に、ミニチュアを前にしての話し合いをしているのが現在の状況。
「投石角度の調整は……?」
「この部分でやるんや。投石棒の止まる角度によって変えられるようにしてあんねん」
「上々だな。投石の強さの設定は一律なのか?」
「一応やな、こうやって――――」
次々に質問を投げて、真桜がそれに答えて行く。
現代知識は多岐に渡る。小学生の時に行った理科の実験の知識でさえ、この時代には宝となり得る。ましてや、義務教育を終えていれば、この時代の智者の持ちえないレベルまで到達している分野もあるのだ。
物理学の中の物体の運動、つまりは力学についてなどその中に含まれる。数学の複雑な計算を解く公式であっても、この時代に提唱すれば奇人と言われても不思議では無いのではなかろうか。
この世界には例外として氣という概念があるが、一般兵にとっては物理的な兵器ほど使い勝手が良くて、恐ろしいモノは無い。故に、秋斗はこの投石器の改善を任された時に素直に受け入れた。自分の知識が少しでも役に立つのならば、と。
兵器の改善がなんの為か理解してはいる。所詮は兵器なのだ。人を多く殺す為の道具である。それを理解して尚、協力に乗り気だった。
少しばかり今の秋斗は前の秋斗と違う。そのズレが何かは、彼も気付いてはいない。
「――――こんなとこでどうかな、真桜?」
「いやぁ……兄やんの話聞けて良かったわぁ。不満残っとった微調整もすんなり出来そうやし、それに投石器の応用がこんな簡単に出来るとは思わへんかった。さすがは魔法瓶の生みの……って今はちゃうんやった」
話も終わり、嬉々として話していた真桜がしゅんと落ち込む。
今は華琳に依頼されてから三日後である。武器の改良に勤しんでいた真桜は、昨日の昼に漸く全てを終えて、半日の休息を取った後に秋斗との仕事に臨んでいた。
鉄板と断熱材の役目を果たす木々を
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