強いられた変化
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「……あーもう! お前さん、怒ってるだろ!」
「ええ、怒ってるわ、とっても。許す気なんてさらさら無い、と言ったらどうする?」
「うわ、ひっでぇ……確かに俺の失言だけどさぁ……ここいらで勘弁してくれ。大きくても小さくても、曹操殿の魅力は変わらんだろ。元譲とか妙才みたいな綺麗な奴が惚れるくらいなんだから」
「……仕方ないわね。今度でいいから店長の店の甘味を、日を分けて十個献上しなさい。試作段階のモノでも構わない。そうしたら許してあげる」
「……店長に叱られるな、こりゃ。まあ、ありがと」
情けなく懇願しながらも、上手く部下と掛け合わせた褒め言葉を滑り込ませる秋斗を見て、漸く溜飲が下がった華琳が妥協案を提示した。その他愛ない掛け合いはそこで幕を下ろす。
次に、真桜は華琳に獰猛な笑みを向けられた。言葉を発さずに口を動かす。その動きだけで何を言いたいか分かった。
『おしおき』
ぶるり、と身体が震えた。
それは桂花のように、人の身を堕落させて求められるモノなのか、それとも霞のように、好きなモノを延々と取り上げられるモノなのか。
真桜が怯えた為に、満足そうに微笑んだ華琳は、数瞬後に何故か苦々しげに眉根を寄せて、
「徐晃、椅子」
短く鋭く、秋斗に不足を示す。逆らえるはずも無い。華琳は王。真桜ならば戦々恐々と直ぐに動いたであろう。
「あ、すまん。忘れてた」
されども彼は、どっこらせ、と腰を上げてからのんびりと椅子を引き出していく。その光景を自然と受け取れる事が、真桜にとっては不思議でならなかった。
「……はぁ。相変わらず緩い……もういいわ」
短く呆れを零した華琳。ジト目で秋斗を睨んで腰を下ろした。真桜と秋斗は、その対面に椅子を並べて座る。
幾分か空気が張りつめた気がした。さながら、軍議の場のよう。静かに見つめるアイスブルーの瞳は秋斗を試している。否、信頼している、と言っていい色。
カチリ、と歯車が噛み合ったような感覚を真桜は感じ取った。隣を見て、真桜は茫然とする。秋斗が先程までとは全く違う人に見えた為に。
「兵器の開発は問題ない。現物と追加物資を既にいくつか送ってあるなら、真桜が到着して改善出来るだろう。新兵器の開発は保留だ。次の戦までって限定されたら試行と物資収拾の時間が足りない。その代わりといっちゃあなんだが投石器の種類を増やす事にした。改良するだけになるけど、ぶっつけ本番でも十分だと思う。足りない資材は後で書簡に纏めとく。
あと……曹操殿自ら此処にわざわざ来たんだ。進歩状況の確認を直接する為ってのもあるだろうけど、聞かれたくない話なんだろ? 何があった?」
真桜の思考は止まる。華琳が何かを聞く前に言葉を紡いでいく彼は異質に過ぎた。
別段気にする素振りも見せずに
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