強いられた変化
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はそういう関係にはならん」
やれやれとため息を吐いたのは真桜。
詠と共に黒山賊討伐に当たっていた彼女は、雛里や月の事も聞いていて、詠の気持ちにすら当たりをつけていた。軍人とは言っても女の子、恋愛のあれこれは大好物な果実であるのだ。
だからこそ、自分が軽く見える性質の悪い冗談を使ってまで探りを入れてみたのだが、その結果には少しばかりの呆れを感じていた。
椅子を反対にして腰を降ろし、キコキコと一定のリズムで揺れる真桜は、眉根を寄せる。
「なぁ兄やん。兄やんは名が売れとる。記憶が戻ったらウチらんとこの将になるってのもさっき聞いた。事務仕事もこなせる兄やんなら給金も秋蘭様並には上がるはずや。甲斐性的には問題あらへんやろ。女の二人三人くらい侍らせても、誰も文句なんか言わへんと思うで? たった一人しかいらへんって心意気は隣に立った女にとっちゃありがたいやろけど、どや?」
さもありなん、この時代ならば有力者が幾人かの伴侶を持つ事など当たり前の世の中である。秋斗の元の世界の歴史上では、現代に至るまでは一夫多妻などそこいらの国々に溢れていたのだ。言わずもがな、故郷の日本にしても。
何も問題は無い、と秋斗の価値観に対して否を示す真桜に、何処か微妙な表情をした秋斗は口を開いた。
「もし、だ。万が一、俺に惚れてくれるような心優しい人が何人かいたとしよう。けど俺には……全力で複数人に想いを注ぐとか、平等に皆を愛するとか、そんな器用な事は出来ないね。一番好きになった女を優先したいし、実際にそうするし、そうなると思う。自分が一番になりたいとかで争う女達は見たくない。皆を平等に愛してくださいなんて気持ちを押し付けられても困る。何より一番好きになった女を傷つけたくないし。そういうわけでお前さんの意見は却下だ。誰の事を言ってるかは……知らないって事にしておいてやる」
呆然と、真桜は口を開け放った。読み取られていた、と遅れて気付いてバツが悪そうに顔を顰めた。
秋斗は詠の事も月の事も、もしかしたらそうかもしれないくらいには予測を立てていたのだ。異常な程、自分に尽力してくれるのだからある意味で当然。
そんな詠とこの前から親しくしているという真桜からの探り。これほど分かり易いパズルのピースは無い。最後に今のかまかけで予測をカタチに為した。
「……悪い男やな、兄やんは」
苦々しい声音を向けられて秋斗は苦笑を零した。自嘲と懺悔とを存分に含んだモノであった。
「クク、そうだな。だから真桜はこんな悪い男には引っかかるなよ? そんで俺みたいな悪い男に引っかかった子に注意してやってくれな」
自分からはさすがに言えないから、女の子である真桜がとりなしてやって欲しいと願いを込めて。
違えずに読み取った真桜はまた
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