暁 〜小説投稿サイト〜
魔法科高校の神童生
Episode29:九校戦、開幕
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みを浮かべる深雪は、ピクリと肩を揺らした雫に気づくことはなかった。

「い、いや。隼人はただの幼馴染だよっ?」

珍しくエイミィが攻められる側になり、以前彼女に散々弄られた経験のある周囲が笑みを濃くしていく。

「そうなのかい? この間は二人で遊園地に行ったそうじゃないか」

「すっ、スバル!? 今そういうこと言ったら…!」

スバルによって齎されたスキャンダルは、深雪によって肩透かしを喰らった少女たちの興味を爆発させるには十分な威力を持ってた。
たちまち包囲されて質問攻めにあっているエイミィを、雫は暗黒オーラを発しながら見ていた。

「し、雫! 抑えて抑えて…!」

長い間友人をやってきているほのかにとってでさえ、これほど感情を露わにする雫は珍しかったのだが、このまま放っておくと、次は雫がまるでハイエナのような乙女達の標的にされてしまいかねないために必死で宥める。

「でも、九十九くんって可愛いよね」
「あ! そうそう、なんか弟みたいな感じでほっとけないっていうか」
「顔もかなり童顔だし、声も高いもんね。年下の男の子みたいで、そそる」
「九十九くんと十三束くん、どっちが攻めだと思う…?」
「いつも見てる感じだと九十九くんが攻めよねぇ、十三束くんは嫌がりながらも受け入れてそう」
「逆にベッドの上じゃあ、十三束くんが積極的かもしれないわよ?」

などと、実際に隼人と鋼が聞いたら全力で否定されるようなことを話す乙女(腐)を見て、雫は隼人の意外な人気を実感していた。

「……負けない」

まだ恋心とは言えない、だからと言って、隼人が他の人と一緒になるのを黙って見ていられるかと問われれば、雫は否と答える。
小さく呟いた雫は、気怠げな瞳に闘志の炎を燃やしていた。



☆★☆★



「ぶぇっくしょい! …うぅ、やっぱり風邪ひいたのかな?」

夏の夜。昼間の茹だるような暑さが和らぎ、かなり涼しくなった宿の外の森林で、俺は盛大にくしゃみをした。
暗がりで精神力向上のため座禅を組んでいたのだが、続けること一時間ほどでギブアップのようだった。

「ん〜。夏の夜は幾ら外にいても体が冷えないからいいよねぇ」

固まった体を解すために柔軟体操をしながら、昨日のパーティのことを思い出す。
自分に向けられた、かつて感じた中でも最上級に危険だと思ったほどの殺気。それを放っていた紫道聖一という男。今日一日調べてみて分かったが、どうやら彼には一度出兵した経験があるようだった。それも、俺と同じ戦場で。

(あの時の記憶って…結構覚えてないんだよね…)

それは今から三年前にあった新ソ連による佐渡侵攻戦のことだった。確かに思い出そうとすれば断片的には思い出せたが、完全に思い出すことはできない。まあ
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