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魔法科高校の神童生
Episode29:九校戦、開幕
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えがあった。

(極微弱な精神干渉魔法。それがここら一帯を覆ってるのか)

大規模かつ最小効力の魔法。だが、目立つものに目を引かれるのは人間において普通の性質。目の前に金髪の女性がいれば、そのすぐ後ろに老人が立っていても気づく人は少ない。今発動している魔法は、その人間の性質を最小の出力で最大限に活かしていた。
ふと、老師の目が隼人を見、そして少し離れた所にいる達也を見て笑みを浮かべた。年不相応の、イタズラの成功した少年のような笑み。

(試されたってことかな?)

肩から力を抜き、皿に盛っていたプチトマトを口に運ぶ。
老師の囁きを受けて、金髪の女性が脇へどいた。そして今まで女性を照らしていたライトが一斉に老師へ向けられ、周囲に先ほどよりも大きなどよめきが伝播した。

「まずは、悪ふざけに付き合わせたことを謝罪する」

老師の発したその声は、隼人の予想よりもずっと若々しいものだった。

「今のはチョッとした余興だ。魔法というより手品の類だ。だが、手品のタネに気づいた者は、私の見たところ七人だけだった。つまり」

老師が何を言おうとしているのか、会場の高校生全員が注目する。

「もし私が君たちの鏖殺を目論むテロリストで、来賓に紛れて毒ガスなり爆弾なりを仕掛けたとしても、それを阻むべく行動を起こすことができたのは七人だけだ、ということだ」

会場が静寂に包まれた。老師の言った七人という数字。確かにその人たちは老師の存在に気づけた。だが、テロを防ぐために本当に行動できたのはそれよりももっと少ないだろう。

(これが、トリックスターの魔法…)

圧倒的な魔法力と手数の多さでゴリゴリ攻める『蒼夜叉』櫂と、必要最小限の魔法で的確に敵を制圧する『トリックスター』烈。対極に位置するこの二人はよく対比される。

「魔法を学ぶ若人諸君。魔法とは手段であって、それ自体が目的ではない。そのことを思い出して欲しくて、私はこのような悪戯を仕掛けた。私が今用いた魔法は、規模こそ大きいものの、強度は極めて低い。魔法力の面から見れば、低ランクの魔法でしかない。だが君たちはその弱い魔法に惑わされ、私がこの場に現れるとわかっていたにも拘わらず、私を認識できなかった。魔法を磨くことはもちろん大切だ。魔法力を向上させる努力は決して怠ってはならない。しかし、それだけでは不十分だということを肝に銘じて欲しい。使い方を誤った大魔法は、使い方を工夫した小魔法に劣るのだ。明後日からの九校戦は、魔法を競う場であり、それ以上に、魔法の使い方を競う場だということを覚えておいてもらいたい。魔法を学ぶ若人諸君。
私は諸君の()()を楽しみにしている」

だが、彼らは共通して魔法の使い方を誤ったりはしなかった。
彼らは魔法を『道具』として認識してい
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