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何度玉砕しても
第四章
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ら数日後のことだった。
 省吾は朝の学校の廊下を歩いていた。そこで見たのだ。
 そこには利光がいた。そして彼女も。
「やっと実ったな」
「ああ」
 二人は笑みを交えさせる。その隣にいる彼女もまた。
「田中君には負けました」
「負けたのか」
「そうですよ。本当に」
 困った顔だった。だが同時に笑ってもいた。
「何度も何度も。それで」
「だろうな。まあわかっていたけれどな」
 省吾は笑みのままで幸恵にも言うのだった。澄んだ笑みで。
「こいつは強引で諦めないしな」
「はい。それでもそれが」
「だから言っただろ」
 ここで利光が言ったのは幸恵だけでも省吾だけでもなかった。二人に対してである。
「俺は絶対に諦めないってな」
「思ったらあくまでか」
「ああ。だから」
 幸恵を抱き寄せる。幸恵も困った顔であってもその手を拒みはしなかった。むしろ顔の表面ではそうであってもその様子では違っていた。このときは様子こそが彼女の本音だった。
「俺は月上さんをずっとな」
「ずっとか」
「そうさ、ずっとだ」
 またしても言葉に淀みがない。何処までも淀みがない。
「私も。諦めました」
 幸恵は苦笑いだ。それでも利光から離れようとはしない。むしろ彼にさらに寄り添うようになっていた。完全に彼を受け入れていたのだった。
「田中君には」
「諦めたって言われると嫌だけれどな」
「じゃあ一緒にいることにしました」
 言い換えたこの言葉こそが彼女の本音だった。それを今出したのだ。
「それで。いいですか?」
「そう言ってもらえるとな。嬉しいな」
「よかった」
 幸恵がようやく笑った。澄んだ、優しい笑みだった。
「田中君が喜んでくれるのなら」
「俺はもう最高に嬉しいんだけれどな」
「それはわかるさ」
 省吾がここで言葉をかけた。利光に対して。
「御前の顔でな」
「そうだろ?だからもうずっと」
「月上さんだったな」
 省吾は幸恵にまた顔を向ける。そうして彼女に言葉をかける。
「はい」
「わかってると思うがこいつは馬鹿だ」
「おい」
 省吾の今の言葉に利光が苦笑いになる。それでも悪い気はしてはいなかったが。
「馬鹿かよ」
「馬鹿でもいい奴だ」
「ええ」
 そのいい奴という言葉に幸恵は笑う。優しい笑みの輝きが増した。その名前の通り月の光の穏やかでそれでいて澄んだ笑みであった。
「いい人です。それが伝わったから」
「大事にしてやってくれればいい。頼むな」
「わかってます。それだから」
「ああ。頼むな」
 そこまで言うと一歩前に出た。そうして二人と擦れ違う。
「ずっと幸せにな」
「勿論さ」
「二人で」
 二人もまたその言葉を交あわせる。そのまま省吾と擦れ違い二人も歩きはじめる。
「俺も」
 二人
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