暁 〜小説投稿サイト〜
ローダンテとムナティウス
第三章
[2/3]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初

 そう言ってその場を後にした。
「どうしても無理だから。諦めて」
「ローダンテ、何処に」
 見ればアルテミスの神殿の方へ駆けて行く。ムナティウスもそれを追った。
「来ないで」
「嫌だ、絶対に嫌だ」
 彼は言う。
「君と一緒にならなければ。僕は死ぬ」
「そんな」
 ローダンテは後ろを振り向いた。そこにはムナティウスがいる。彼は追って来ていた。それを見てもう泣きそうになっていた。
「私はどうしても駄目なのよ」
「僕は君以外の人は目に入らない」
 二人は言う。
「アルテミス様にお仕えしているから」
「一緒になりたいんだ」
 ローダンテの足は速かった。猟師であるムナティウスのそれと同じ位だった。
 それでも次第に疲れが見えてきた。徐々にその距離が狭まる。
「何でこんなことに」
 それを神殿から見ている少女がいた。アルテミスであった。
「一緒になれる筈だったのに」
「アルテミス様」
 ローダンテは神殿の入口に立つアルテミスに気付いた。そして彼女に乞う。
「私はアルテミス様のお側にいたいのです」
「ローダンテ」
 それはアルテミスにも聞こえていた。その言葉が女神の心を打つ。
 しかし心を打つのは彼女の言葉だけではなかった。ムナティウスの言葉も彼女の心に響いていた。
「僕には君しかいないんだ!」
 ムナティウスは一途にローダンテだけを見ていた。
「だから、だから一緒に」
「私はアルテミスの側から」
「側にいたいのね」
 アルテミスは苦しい顔でローダンテに問うた。
「私の側に」
「はい」
 ローダンテは答えた。彼女の前に身を投げ出す。
「ずっと貴女のお側に」
「わかったわ」
 こくりと頷いた。そして今度はムナティウスに問う。
「ムナティウス」
「はい」
 彼もまたアルテミスの前に来た。そして畏まる。
「貴方は。ローダンテの側にいたいのね」
「その通りです」
 彼は答えた。
「その他には。何もいりません」
「わかったわ」
 アルテミスは二人の言葉を聞いたうえでまた言った。
「それなら。ずっと一緒に。そして」
 言葉を続ける。
「私の側に。永遠に」
 右手をゆっくりと上げた。自身の手の平から白銀色の光を放つ。それは月の光の様に優しく二人を包み込んだ。
 二人はその中で姿を変えていった。そして徐々に姿を重ね合わせていく。
 そこには一本の薔薇があった。ローダンテの髪の色の花とその瞳の色の茎が。だがその茎も枝もムナティウスの身体の様に強く逞しかった。
「これならいいのかしら」
 花は何も語らない。ただじっとアルテミスを見ているように思えた。
「私の側にいて。一緒に」
 女神は呟いた。
「これでいいのなら」
 他にどうしたらいいのかわからなかった。ローダンテの気持
[8]前話 [1] [9] 最後 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ